愛しい者〜来世に繋ぐ愛
□第1章 奪う愛 〜ルシウス卒業〜
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ルシウスは最終学年を向かえていた。
卒業する前のNEWT試験を控え、スリザリンの談話室でも7年生達が各々自習をする姿が日常化していた。
「兄さま。今日は図書館には行かれないの?」
談話室の暖炉前で本を読んでいたアフロディテは談話室に入って来たルシウスを見つけると声をかけた。
「今日は、自室で勉強するつもりだ。アフロディテは何の本を読んでいるんだい?」
妹の肩に手をかけ、本を覗き込むルシウスにアフロディテは慌てて本を閉じる。
「何でもないわ。つまらない本よ。そ、それより兄さま、今夜は冷えるんですって。あまり遅くまでお勉強なさらないでね。」
談話室の暖炉の火がパチリとはぜる。
赤々とした炎がアフロディテの顔に陰影を付ける。
今年のクリスマスに14歳の誕生日を迎えるその横顔は少女から大人の女性への片鱗を見せていた。
ルシウスは時々自分の妹であることを忘れてしまう時がある。
いつものように静かに、穏やかに微笑む妹がハッとする程妖艶に見えてしまうのだ。
ーーーそれは、昨年マルフォイ家で開かれたパーティーで、アフロディテと客人のヴォール氏がワルツを踊るのを見た時から続いていた。
『私はどうかしている・・・・アフロディテは実の妹ではないか!』
しかし、そう打ち消しても打ち消しても、アフロディテへの想いはルシウスの胸の中から消えることはなかった。
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魔法でオーロラの夜空が演出されているホグワーツの大広間。
アフロディテはスリザリンの友人であるリデラートと夕食を取っていた。
テーブルの上には、チキンやポテト、魚の香草焼き、ラムチョップ、様々なサラダにデザートが所狭しと並んでいる。
「ねぇ、アフロディテ、あなたのお兄様、ルシウス様って、卒業されたらどうなさるの〜?」
リデラートは、ルシウスの熱狂的なファンである。
アフロディテは口に入れたサラダを咀嚼しながら、モゴモゴと呟く。
「さぁ、わからないわ・・・・」
「やっぱり魔法省かしらね。それとも、何か事業をなさるとか!何たって天下のマルフォイ家だもの。ね、ね、それよりもルシウス様って、恋人はいるのかしら?まさか、すぐにご結婚とか!!キャー」
一人で盛り上がる友人にアフロディテは冷めた眼差しを向け口を開く。
「兄さまはね〜ずっと私を守って下さるの。だから、誰とも結婚なんてなさらないわ。」
「出たよ〜。アフロディテのブラコン。そんなのは夢!夢!確かに私だってさー、あんなに素敵な人が兄上だったら、血が繋がってても好きになるかもしれないけど。ルシウス様は、あんたのナイトじゃないから・・・もっと大人な女性を相手にすると思うよ〜」
リデラートも純血貴族の一人娘なのだが、何分両親が甘やかして育てたせいか、自由奔放で口が悪い。
アフロディテの夢見るような顔の前に指1本立てて、ちっ、ちっと舌打ちして見せた。
アフロディテはそんな友人の発言が聞こえたのか聞こえないのか、遠くスリザリン監督生席で食事を取る兄を見やった。
『兄さま・・・・』
アイスグレーの瞳を潤ませてルシウスを見つめる表情は恋する少女そのものであった。
しかし、周りの友人達は入学した時から仲睦まじいこの兄妹の姿を見慣れており全く違和感を感じるものはいなかった。
父であるアブラクサスでさえ、仲の良い子供達に親としての満足感こそ味わえ、まさか少しずつ密やかにお互いも気づかないまま惹かれあっているとは気づきさえしなかったのである。