愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第1章 奪う愛 〜死喰い人〜
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カツカツと靴音を響かせながら豪奢な邸の廊下を2人の男性が歩いていく。

太陽高い真昼であるにも関わらず、鬱蒼とした森深くに佇む邸の奥深くまでは明るい陽光は届かない。

薄暗い廊下には等間隔で魔法のろうそくが灯り、ぼんやりとした影を落とす。




「間もなくだ・・・」



ルシウスの前を歩いていたアブラクサスは前を向いたまま小声で言う。
そのまま歩を進めているので、ルシウスの緊張した面持ちには気づかないままである。



今や飛ぶ鳥を落とす勢いで栄えているマルフォイ家の当主と次期当主は、今から重大な決断をしに行く所であった。

アブラクサスは自分の左腕を服の上からわずかにさする。


ーーーーー自分が死喰い人(デスイーター)になったのは、もう何年前になるだろうか・・・・ホグワーツで同級であり、同寮のヴォルデモート卿に忠誠を誓ったのは、自らの強い意志によるものだった。

アブラクサスはヴォルデモート卿がトム・リドルと名乗っていた頃から、彼の類まれなる才能と、闇の力、そして抗おうにも抗いようのない悪なる魅力に取り付かれた者の一人だったのだ。



「我が君もお喜びになるだろう」



アブラクサスの小さな呟きはルシウスの耳をかすめ、闇に溶けるように消えていく。





”トントン”


古めかしい大きな扉の前で立ち止まると、アブラクサスはノックをする。


ややあって、張りのある低い声で返事があった。

「入れ」



”ギギィー”



いかにも年代物の音を出し、重厚な扉を押し開く。

扉の中は、端から端が見えないのではないかと思う程、長いテーブルが置かれ、その一番奥の肘掛椅子にゆったりと座る一人の男性が目に入った。

男性はゆっくりと立ち上がるとルシウスとアブラクサスの方へ向かって歩いて来た。

薄暗い室内の影から出てきた男性の顔を見て、声を上げそうになったが、ギリギリの所でルシウスは堪えた。


・・・・目の前の男性は、ヴォルデモート卿なのだ。


父が崇拝する闇の帝王なのだ!!


そして、今から自分もマルフォイ家の人間として、闇に染まって生きていく儀式を行う為にこの場に居るのだ。
ルシウスは緊張の余り、乾いた唇を強く噛んだ。
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