愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第1章 奪う愛 〜惹かれあう2人〜
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ロンドン、キングスクロス駅の9と3/4線ホームは、魔法使いや魔女でごった返していた。
イースター休暇を家で過ごす生徒の為にホグワーツ特急は煙を上げてホームに滑り込んで来る。
赤と黒の車体が春の陽射しを浴びて輝いている。
停車した汽車からは、元気な子供たちの賑やかな声が溢れ出して来た。


「急げドビー。」


張りのある声が響く。
長身で美麗な青年がひと目見て高価とわかるシルクのローブに身を包み、その長い足を悠然と進める。
その後ろから屋敷しもべ妖精のドビーがおどおどした様子で小走りで主人の後を必死で追いかけている。


美麗な青年−ルシウスはホグワーツ特急のタラップから降りようとしている愛しの妹アフロディテを見つけると駆け寄りスマートに手を差し出した。


「お帰り。アフロディテ。」


「!兄さま、ただいま。まぁ、ドビーも一緒なの。」


子供の頃から屋敷しもべ妖精とは仲良しのアフロディテはドビーを見てニッコリと微笑む。
それを見てルシウスは小さく舌打ちし、ドビーに荷物を運ぶように言い付ける。


「さぁ、疲れただろう?馬車を待たせてあるから、おいで。」


ルシウスは妹の体をローブで包み込むように抱き込むと、背を屈めてアフロディテの頬にキスをする。
プラチナブロンドの髪を後ろで一つに結わえたルシウスと、同じくプラチナブロンドの腰まで届くゆるやかなウェーブを描く髪をふわりと風になびかせて歩くアフロディテ。
まるで、一対の美しい宗教画にも見える2人の様子に、周りの魔法使い達はため息を漏らす。


「ほら・・・・マルフォイ家の・・・・あぁ、あれが・・・・何て美しい兄妹なのかしら・・・」

「・・・・・ほぅ・・・」


なかには、アフロディテのあまりの美しさに言葉にならずに、惚けたようになってしまうマグルさえいた。


ルシウスはそんな不躾な視線から妹を守るかのように、彼女をぐっと引き寄せ自分の体に密着させた。

そして、アフロディテを気遣いながらも先を急ぐ。

アフロディテは兄にされるがままに密着した体を自分からより一層近づける。

今年19歳になるルシウスからは大人の男の色香が漂う。成人してから彼が好んで付けるヴェルガモットの香りがアフロディテを痺れさせた。


『兄さま・・・・・』


アフロディテは兄に抱かれて歩きながら隣にある端正な顔を盗み見る。
高い鼻、切れ長の瞳、そして、自分に笑いかけたり口付けてくれる優しい唇。
思わず頬を染めてしまう程、兄ルシウスは何もかもが完璧な大人の男性だった。


『あの唇が私に愛を囁いてくれたならどんなに素敵かしら・・・・』


アフロディテはそう夢見るのだった。
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