愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第1章 奪う愛 〜ヴォルデモートの策略〜
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雲の流れる大広間の空を仰ぎ見て、アフロディテはため息をつく。
5年生であるアフロディテ達は、今週からO・W・Lの為、個人用机が並べられた大広間で試験を受けていた。

午前中の魔法史のテストは学年で1.2位を争うアフロディテでも頭を悩ますものだった。

何といっても、ビンズ先生の授業は、毎回眠りを誘う子守唄のような教科書の棒読みで、スリザリン生の中でも、眠らずに聞いているのは、数名いるかいないかのレベルなのだ。



アフロディテは再びため息をつくと、両手を頭の上で組んで大きく伸びをする。
猫のようにしなやかな体が天に向かって伸びていく。


「ねぇ、アフロディテ、どうだった〜?」


親友のリデラートが駆け寄り尋ねる。


「まぁまぁかしら・・・」


ペロリと舌を出して笑うアフロディテにリディは手を振り回してバタバタと大騒ぎしながら言う。


「あなたのまぁまぁは、出来たってことじゃないっ!」


リディの声に周りのスリザリン生達も「そうだ!そうだ!」と同調の声を上げる。


アフロディテはそんな周りの喧騒にも無関心の様子で、机上の教科書やノートをまとめると立ち上がった。




「リディ、私、寮に戻るわ。昼食は先に食べていて。」


「・・・アフロディテ!なんで?」


問い掛けるリデラートに答えることなく、アフロディテは一人地下牢にある談話室に戻る。





スリザリン寮は、粗く削られた石壁の所々に設けられた窓から湖の中が見渡せる造りになっている。
ゆらゆらと揺れる藻が湖面の光に反射して、幻想的な光景を見せていた。

深夜、談話室に一人いて、窓から湖内を見るとマーピープルと目が合い、そうなると呪いをかけられるという恐ろしい逸話もあるようだ。


『マーピープルなんて怖くないわよ・・・』


アフロディテはそう一人ごちて、女子寮への階段を上がる。

部屋に入ると、机の上におかれた白い便箋を手に取る。
便箋には、赤い蝋でマルフォイ家の紋章が押されている。アフロディテはそれをローブに隠すと大急ぎでふくろう小屋に向かった。


午後もまた試験がある。
急がないと昼食も摂り損ねてしまう。
しかし、今アフロディテの心を占めているのは、兄ルシウスへ手紙を送ることだけだった。


彼女は、白く大きなふくろうを選ぶと、足にしっかりと手紙をくくり付け、ふくろうの羽を優しく撫でた。


「頼んだわよ。ふくろうさん。愛しい兄さまにちゃんと届けてね・・・」
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