愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第1章 奪う愛 〜揺れる気持ち〜
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白く大きな入道雲が青空というキャンバスに思い思いの形を描く。
アフロディテは久しぶりに裏庭から続くウイルトシャーの森に散歩に来ていた。
夏のジリジリとした陽射しは、帽子をかぶっていても容赦なく肌を射す。


ホグワーツから邸に戻ってはや五日も経つというのに、未だに兄ルシウスには
会えずにいた。

一日千秋の思いで待っているというのに・・・・




『兄さまのばか・・・・』




その日の夜、待望の待ち人が姿を見せた。

「ただ今戻りました。」


ルシウスは幾分疲れた様子を見せてはいたが、ソファに座るアフロディテの姿を認めるといつもの美麗な顔を綻ばせて笑みを見せた。



「兄さまっ!!」



アフロディテは思わずルシウスに抱きついていた。
突然飛びついて来た妹にびっくりしながらも、ルシウスは優しく抱きとめ少し背をかがめると、妹の頬にそっとキスをする。



「お帰り、アフロディテ。久しぶりだ。」



愛しくて堪らないといった表情でアフロディテの瞳を覗き込む。
アフロディテは無意識に抱きついたものの、至近距離で兄に顔を覗き込まれると、急に恥ずかしくなり、慌てて離れた。



「はっはっ・・・アフロディテはいつまでも兄さまだな!」


冷やかすようにアブラクサスが口を開いた。


ルシウスは、頬をほんのり赤く染めて俯くアフロディテを横目で盗み見る。
3ヶ月しか離れていないのに、妹はまた美しくなった。

透けるように白い肌、秀麗な眉、涼やかなアイスグレーの瞳、愛らしいぽってりとした桜色の唇、ゆるやかなウェーブのかかったプラチナブロンドの髪。
そして、すらりと伸びた手足に、ふっくらとした胸のふくらみ・・・・今まで子供だとばかり思っていたが、妹は女性の魅力を十分に備えつつあった。



ルシウスは軽い眩暈を覚え右手で眉間を押さえる。
その仕草を疲れからだと勘違いしたアブラクサスが、部屋で休むように進言する。
ルシウスは、このままアフロディテを見ていたら冷静ではいられなくなりそうで、父の言葉に従い部屋で休むことにし、居間を後にした。
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