愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□ 第1章 奪う愛 〜永遠を願う聖夜〜
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夕闇が迫る頃、ウイルトシャーにあるマルフォイ邸には、純血魔法族の貴公子貴婦人達がクリスマスの宴に集いつつあった。

豪奢な玄関ホールでは、マルフォイ家の美しい兄妹が来客の出迎えを担当していた。

ルシウスは、光沢のあるグレーがかった黒のドレスローブ。
この日の為に、マダムマルキン洋装店であつらえさせた一品である。
背の高いルシウスは見事なまでに完璧に着こなしており、訪れた婦人達を虜にするのだ。

そして、妹のアフロディテは愛らしい顔には不釣合いなくらい大人びたドレス姿。
肩をすべて出し、丸く美しい胸と輝くデコルテを強調するかのようなデザインのドレスにきゅっと引き締まった細い腰。
魔法界一と噂される通りの美しさに、やはり訪れた男性をメロメロにしてしまっているのだった。


「ご機嫌様。」


「よくいらっしゃいました。今宵はどうぞ楽しんで行って下さいね。」


「まぁまぁ、少しお目にかからない間に、何てお綺麗になられたんでしょう。道理でアブラクサスがどこにもお出しにならないはずだわ!まさに箱に入れておかないと、と言った所かしら」


子供の頃からの知り合いなどは、アフロディテの美しく成長した姿を見て、口々に感嘆の声を上げていく。

ルシウスは心の中で『ふん、当たり前だ。アフロディテ以上に美しい女などいない』と毒づきながら、美麗な微笑みを浮かべ挨拶を繰り返す。



来客が途切れた時など、2人は見つめあい、そっと手を触れ合わせる。

ルシウスを見上げるアフロディテは天使のように満ち足りた微笑みを浮かべ、少し頬を染めた顔がますます美しさを際立たせている。

ルシウスはルシウスで、愛しい妹を包み込むような優しい笑顔をアフロディテに向け、時折髪や頬に優しく口付けを落とす。




おそらくーーーーーーーーーーーーーこんな所を人に見られたら仲の良い兄妹では通用はすまい。

傍目から見ても2人は愛し合う恋人同士といった雰囲気を漂わせていた。





マルフォイ家の大広間−−−−−−−−中央に広い階段があり、天井にはクリスタルの大きなシャンデリアが揺れている。
眩い光を放つ銀食器が、シャンデリアの明りに反射してキラキラと輝いている。
ルシウスは、集まった来客達に挨拶をして回る。
あちらこちらで、賑やかな談笑が聞かれ、聖夜にふさわしい楽団の音色が奏でられていた。

ルシウスは父アブラクサスの姿を見とめ足を止める。


「父上、今宵はなぜこんなにも大勢のお客様をご招待したのですか?」


例年、クリスマスパーティーを開いているが、今年はいつになく準備も入念で、客も多いことにルシウスは訝しげに眉をひそめる。


「理由か?間もなく分かる。それより、アフロディテが吸血族の族長に迫られているぞ。
ああいう輩から妹を守るのもお前の役目ではなかったのか。」


父に上手く話しをはぐらかされたようだが、果たして振り返ると、愛しい妹は吸血鬼一族の長であるディーレーンに今にも首筋に牙を立てられそうな程抱き寄せられていた。



ルシウスは大慌てでアフロディテの側に駆け寄る。
ディーレーンは、「ちっ」と舌打ちすると、アフロディテを解放した。
アフロディテは、助かったという安堵の表情で兄を見上げて来る。


「ほら、来るんだ。私の側を離れないで。今宵は、お行儀の悪い連中も来ているようだ。」


ルシウスの大きな手で背中を押され、アフロディテはそっと兄の方に体を預けかける。
誰にも気づかれないくらい・・・・・そっと・・・・・密やかに・・・・・兄の体温を感じられるくらい・・・・近く!!
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