愛しい者〜来世に繋ぐ愛
□第2章 帝王の后 〜つかの間の幸せ〜
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「この所、我が君はあまり出掛けられないなぁ。
あれほどしょっちょう行かれていたマグル狩りでさえここひと月ほどは全くだよな。」
ここ暗黒の森にある闇の帝王の屋敷では、死喰い人達が所謂待機部屋のような所で、噂話しをしていた。
そもそも、帝王の屋敷内で、主の噂話しをすること自体、どうなのかと思うが、如何せんこの部屋に居るような死喰い人は、末端の者達でそのような品性は持ち合わせていなかったのだった。
「やはり、あの方のせいか・・・・。」
「だろうなぁ。以前と比べると端から見ても本当に仲睦まじいご様子だ。
我が君は、アフロディテ様にぞっこんって事さ。」
「そりゃあ、我が君でなくとも、男なら誰だってそうだろう。
あの美しさと可愛らしさと言ったら、なぁ!」
若い死喰い人は、ぼうっと夢見るような表情で、アフロディテの事を話す。
「おいおい、しっかりしてくれよ。それに、下手な事を言うもんじゃない。
我が君に聞こえてみろ。命はないぞ。」
年嵩の死喰い人は、ぶるっと身震いしながら、若い男を嗜めた。
死喰い人達が言うように、ヴォルデモートとアフロディテの関係性は変わってきていた。
メルローに贈る刺繍を一緒に見た日から、アフロディテは少しずつヴォルデモートに心を開くようになっていた。
元来、穏やかで優しくそして明るい性格の彼女は、ヴォルデモートの中に眠る清い部分を見つけ出しているようだった。
「ヴォルデモート様、早くこちらにおいで下さいませ。ほら、本当に可愛らしいっ!!」
アフロディテは、先日ヴォルデモートから贈られた子犬と遊んでいた。
ふわふわで丸々と太った真っ白の子犬。
ヴォルデモートは、ある日その子犬を腕に抱き帰宅したのだ。
驚くアフロディテの方に腕を突き出して子犬を差し出すと、一言こう告げた。
「お前のようではないか!コイツは俺様の足にまとわりついて離れようとしなかったのだ。」
「わたくしはっ、そんなこと致しませんわっ!!」
顔を真っ赤にして怒るアフロディテの頭をポンポンと軽くたたくと、ヴォルデモートは子犬もろともアフロディテを抱きしめた。
その様子を見ていた死喰い人達は、皆驚いて言葉もなかったと言う。
あんなに穏やかな顔をしたヴォルデモートは誰も見たことがなかったのだ。
”ワン!ワン!”
「おいで、ルビー。」
アフロディテは子犬に”ルビー”という名を付けていた。
真っ白の子犬に何故ルビーという名なのかと、ヴォルデモートが訊ねると、
彼女はその白い頬をうっすらと染めてこう言った。
「ヴォルデモート様から頂いた贈り物の中で、この子が一番嬉しかったのです。だから、ルビーです。」
「は?」
「だから、あなた様のその美しい赤の瞳にちなんで・・・・・・・・・ルビー。」
恥ずかしそうにそう告げたアフロディテを、ヴォルデモートは抱きしめた。
この上もなく、愛おしく感じたのだ。