愛しい者〜来世に繋ぐ愛
□第2章 帝王の后 〜再会〜
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棚の上の本を取る為、ヴォルデモートは階段状の脚立に上る。
壁一面が本棚になっている書庫は、日の光で本が傷むのを避ける為に、小さな窓しかなく、日中でも薄暗くなっていた。
わざわざ、脚立に上って本を取らずとも、アクシオで呼び寄せればいいのだが、ヴォルデモート自身も今だ読めていない書物が膨大な数、残されており、
やはり手に取って確認するのが一番確実なのだった。
彼は、明日からアルバニアに出掛けるつもりでいた。
今回の滞在は少し長くなりそうだ。
ヴォルデモートは、一瞬遠い目をして、一冊の本を選ぶと脚立を下りる。
”魂の保存方法と蘇生魔法について”
所々擦り切れた古く分厚いその本は、禍禍しい雰囲気を漂わせていた。
そもそも、このような本が存在していること自体、ほとんどの魔法使いは知らないのだ。
ヴォルデモートは、デスクに本を置き、自分は椅子に座ると、本に杖を向ける。
「悪なる真実よ。魂の切り取りに成功した我に力を与えよ。本よ開け!!」
杖から赤い光が放たれる。
魔法は古い本を包み込み、そして本はガタガタと動き出し、ゆっくりと宙に浮かび上がる。
ヴォルデモートは驚くこともなく、杖を握り締め、本を凝視し続けた。
やがて、宙に浮かんでいた本は静かに机の上に戻り、音もなく表紙が開いたのだ。
ヴォルデモートは満足そうに笑みをこぼすと、本を読み始めた。
「いつお戻りなのですか?」
出立の準備をするヴォルデモートを手伝いながら、アフロディテは訊ねた。
アフロディテの足元には、ルビーがウロウロとしながら2人の様子を伺っている。
「わからぬ。恐らく半月くらいはかかるであろうなぁ。」
「まぁ、そんなに!」
驚きの声を上げる愛しい后をヴォルデモートはそっと抱き寄せる。
”ちゅっ”と触れるだけの口付けを交わし、髪を撫でる。
「ヴォルデモート様・・・・。」
アフロディテが不安気な声を洩らすのも仕方がない。
この屋敷に来て以来、そんなにも長くヴォルデモートが不在になったことなどなかったからだ。
「寂しがってくれるのか?」
ヴォルデモートは戯れに彼女の胸元に手を入れ、柔らかな胸をぎゅっと揉む。
「や!あっ!」
アフロディテは可愛らしい抗議の声を上げ、身を捩った。
何事かと、ルビーがワンワンと吠える。
「案ずることはない。俺様が留守の間は、死喰い人達が屋敷を守ってくれよう。」
「明日は、早くお立ちになるのですか?」
その日の夜、アフロディテは寝室の鏡の前に座ったまま、ヴォルデモートに訊ねる。
「あぁ、そのつもりだ。留守を頼むぞ。」
ヴォルデモートは、すでにくつろいだ格好でベッドに横たわっていた。
自分に背を向けて鏡に向かうアフロディテの姿をジッと見つめる。
「こちらに参れ。」
「はい。」
アフロディテは、シルクのガウンを羽織った姿で、ヴォルデモートの元に歩み寄る。
化粧をしていない素顔だが、その肌は白く輝き、ほんのり色づいた頬に、桜色の唇がヴォルデモートの欲を誘う。
「あッ!」
ヴォルデモートは、アフロディテの手を強く引くと、そのままベッドの上に組み敷いた。
そして、白い首筋に赤い花を咲かせていく。
「しばらくお前を抱くことが出来ぬ。存分にお前を味わっておきたいのだ。」
赤い瞳を濃くし、そう告げたヴォルデモートの貪るような口付けを受けながら、アフロディテは瞳を閉じた。