愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第2章 帝王の后 〜懐妊〜
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暖かな陽射しがカーテン越しに差し込んでくる。
空には、ひばりが飛び、庭には生命の息吹が感じられるこの季節ーーーーまた春が廻って来ていた。

アフロディテは、窓の外をぼんやりと眺めた。
外はまだ少し冷たい風も吹くが、窓越しの陽はポカポカと暖かい。

闇の帝王の拠点となっているここ暗黒の谷に来て3度目の春を迎えていた。
窓から見る景色は、何も変わっていないように見える。
けれども、アフロディテを取り巻く世界は確実に変化し続けていたのだ。

彼女は、華奢な手を細い腹部に当てた。
そして、遠い目をしながら、昨日の出来事を反芻していた。







「我儘もいい加減に致せ!そのように具合が悪いのだ。今日こそは、癒者に診てもらうのだ。
これは命令だ!わかったな」


珍しくヴォルデモートが声を荒げた。
しかし、その表情は怒っている訳ではなく、心配で仕方が無いといった様子なのである。

実は、ひと月程前からアフロディテは食欲がなく、体が怠く、伏せがちになっていた。
もともとそんなに丈夫な方ではなかったこともあり、彼女自身は大して気にしていないようであったが、ヴォルデモートは、再三癒者に診てもらうようにと、うるさく言い続けていたのだった。

それが、昨日になって部屋で倒れたのだから、もうヴォルデモートは譲らなかった。
自分が出掛ける用があった為、信頼おける死喰い人に命じて、癒者を連れてこさせ診察させたのだ。





ーーーーーーーーーーアフロディテはそこまで思い返すと、お腹に当てた手をじっと見つめる。





癒者の診断は思いもかけないものであった。


「懐妊・・・・・・・・・・・・?」


アフロディテは小さな声で癒者の顔を見返す。
癒者は、跪くようにして祝辞を述べる。
周りに控えていたメルローもぱっと顔を綻ばせ、喜びに涙ぐんでいるようだ。

当のアフロディテだけが、何か別の世界での出来事かのようにぼんやりとしている。


「本当にわたくしが・・・・・。」


とまどうアフロディテに癒者は、「間違いございません。月のものも遅れておられるはずです。
11月か12月頃にはお産まれになられます。」と、きっぱりと言い切ったのだ。

アフロディテは、ハッとする。
言われる通り、確かに月のものは何ヶ月か遅れていた。


『では、本当に、子が!!ずっと授からなかったと言うのに・・・・・。』








夕方になり、戻ったヴォルデモートはアフロディテの懐妊を聞き、思わず大声を上げた。
全く予期していなかった事であった為、喜びもひとしおといった感じである。

ベッドで休んでいたアフロディテをそっと抱き寄せ、優しい声で囁く。
そして、甘い口付けを落とすのだった。




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