愛しい者〜来世に繋ぐ愛

□第1章 奪う愛 〜揺れる気持ち〜
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邸中が寝静まった深夜ーーーー蝋燭だけが灯る薄暗い廊下を静かに歩く影が浮かび上がる。
ふかふかとした絨毯を踏みしめ、その足取りはある部屋の前で止まる。

淡いピンク色の夜着のままで青白いくらい白い顔のアフロディテは、兄ルシウスの部屋の扉の前で何やら思案を廻らしている。

ドアに向かい何度も手を上げては下ろす・・・・それを繰り返す。

どうやら、ノックしたいのだが躊躇しているようである。

そして、何度目かの繰り返しの後、意を決したように彼女はドアを控えめにノックする。



”トントン”



その音は静かな廊下に思いのほか響いて、アフロディテはびくっと肩をすくめる。
室内からは何の反応もなく、彼女が戻りかけた時であった。



「アフロディテか?」


ドアが小さく開き、中からルシウスの低く艶めいた声が響く。


「えぇ、兄さま・・・・・こんな時間にごめんなさい・・・・」


ドアが大きく開かれルシウスがアフロディテの手を引くと室内に招き入れる。

もう眠っていたのだろう・・・室内の明かりはすべて消されていた。
ただ、庭に面した大きな窓のカーテンが開けられていて、月明かりが射し込んでいる。
ルシウスは月明かりを背にして立っておりそのたくましい体を浮かび上がらせている。

表情は影になっていてわからない・・・・・




ルシウスもアフロディテも無言だった。

言葉を発することが怖いくらい、室内は静寂に支配されていた。




やがて、どちらからともなく2人は歩み寄り手を伸ばせばお互いの体に触れることが出来る距離まで近づくと立ち止まり、お互いの瞳を見つめ合う。

どのくらいそうしていたのだろうかーーーーーひとつ瞬きをしてアフロディテが口を開いた。


「この前は兄さまがわたくしの部屋にいらしたのよ。ホグワーツ入学前だったわ。」


ルシウスは目だけで頷く。


「あの夜、兄さまはずっと一緒だっておっしゃったわ・・・・・」


ルシウスは無言のまま、アフロディテを見つめ続けた。




やがて妹の体を引き寄せながら「アフロディテ、綺麗だ。」と囁くとそのまま強く抱きしめる。

「・・・兄さま・・・・・」



どうしようもなく惹かれあう2人は兄妹であることを忘れ、激しく口付けを交わす。
息も絶え絶えになるくらいの兄からの口付けにアフロディテは立っていられなくなり、ガクンと膝を折った。
崩れ落ちそうになる寸でのところで、ルシウスは彼女を抱きとめ、二人は床にしゃがみ込むとまたお互いの唇を求め合う。
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