宇宙の病院船(妄想)


□II
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キースの遺志を継ごうとするビルキスの、その激しく強い意志の力に引き摺られるように、イッザはメディカル・スペースシップの操縦士となることを承諾した。ビルキスはインターポールに対し、調査の結果イッザ・シャラフと思われる患者が入院していたことまではわかったが、テロ直後から行方不明になっていると回答した。兄を殺され、病院自体が苦境に立たされている彼女の言葉を、インターポールは疑わなかった。


今までの名前を使う訳にはいかないので、ビルキスはイッザをハーリス・ニダールという新しい名前で呼ぶことにした。


ビルキスはまだイッザ=ハーリスを信用はしていない。兄サーイルの死を密かに逆怨みしてスペースシップ内で暴挙に出れば、全てが終わりだった。最初の出動は人間は彼ら二人だけ、後は看護や手術の助手、救助作業を行う高度な機能を備えるロボット数体をスタッフとして乗せることにした。


救命チームとして一緒に乗り組む予定だった医師や看護師からは、救命活動が十分にできないと反対された。操縦士の信頼性に疑問を持つ者もいた。ビルキスはイッザ=ハーリスの心中を見極めるまでは、他の人間を乗せるつもりはなかった。


転院先の病院で要人が暗殺されたことが、患者を守ったキースの行動を世間に再評価させることになり、新たな支援者も現れた。地上待機になったウォーレン・ゲイルは、軍の人脈から宇宙での戦闘の情報をビルキスに送る役目を買って出た。新院長レイチェルは、ビルキス達が挙げた救命の実績を基に、今後各国政府や国際機関への働きかけを行っていくことになる。


病院船自体は武装はしない。だがビルキスは万一の場合は、自分と収容中の患者を守るため、拳銃を携行し、ウォーレンからの情報を受けて、ハーリスと最初の宇宙での救命活動に向かった。


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初出・2012/02/12 フォレストブログ
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