宇宙の病院船(妄想)


□V
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最後までハーリスの話を聞いていたビルキスは、彼に言った。


「ご両親が殺された、それがあなたがテロリストになった理由…でもそれなら、たとえ命を取られても、志に反することは子供たちに教えないと節を曲げなかった、ご両親の心は、誰が受け継ぐの? あなたはそれを放ったままにしておくの?」

「あの時は、それしか道が無いと思った…そして今の俺は、もう父や母のように生きることはできない。親の代わりに、子供たちに何かを伝える資格など無いんだ」

「そう言ってしまう前に、あなたはご両親が少しずつ築き上げようとしていたものを、逆に壊していたことに本当に気付いているの? ここで何人パイロットの命を救おうと、ご両親の心がわからなければ、あなたは破壊しかできないテロリストのままだわ」


ビルキスの眼前に、兄が爆死した現場が鮮明に蘇った。怒りが、込み上げた。
「わからない…私にはわからないわ」
ビルキスは初めて激しい感情をハーリスに直接向けた。
「私がご両親の娘なら、そんなことはしない。そんな、親を二度殺すようなこと…!」
ビルキスはハーリスに背を向け、足早に部屋を出た。

ハーリスは、ビルキスの問いに、最後まで応えなかった。



その頃、ハーリスの両親の思いを受け継ぐ人間は、ひっそりと地上にいた。一人で、見えない真相を、ずっと求めていた。



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初出・2012/04/01 フォレストブログ
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