宇宙の病院船(妄想)


□I
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宇宙の病院船、メディカル・スペースシップ。

宇宙での戦闘時に安否不明となり、味方が救助できなかったモビルスーツやモビルアーマーのパイロットを陣営の別無く捜索し、生存者の救出・救命医療を行い、安全に治療を受けられる場所まで送り届けるのが任務だ。戦闘以外にも、宇宙での事故や遭難があれば、直ちに出動する。


地上に於ける赤十字のような救命活動を、宇宙で行うだけの資金や人材を持つ組織は、未だなかった。パイロットの救助は各陣営が自軍のパイロットに対して行っていた。だが激戦で混乱すれば、重傷を負っても救助の手が届かぬまま、損傷した機体で宇宙をさまよう者もいた。



こうした状況の中で、独自にメディカル・スペースシップによる活動を始めようとする医師がいた。キース・イザード、36歳。ソフィアシティ総合病院の院長である。きっかけは、MSパイロットだった弟アースキンが、大規模な宇宙戦役で亡くなったことだった。


アースキンの機体は一時行方不明になり、キース自らが当たった遺体の解剖結果から、発見が早く救命医療を施せば、助かった可能性が高かったことが判明した。それが、彼を突き動かした。



ソフィアシティ病院では、一般の保険医療と共に、世界の富裕層や、各国の要人相手に保険のきかない最先端医療も行っていた。医師・看護師の人件費や、医療ロボットなどの研究開発には費用を惜しまない一方、資材などで徹底したコスト管理を行い、経営の上でも大きな利益を上げていた。父から継いだ時は地域の中堅病院だったが、彼一代で国の内外に34の病院を持つ大病院グループに発展させていた。



彼は、そこから得た資金と人脈を活用して、スペースシップの建造を進めた。宇宙での救命活動の実績を積むことで、将来は宇宙の赤十字のような本格的な救命組織を作りたいと考えていた。



キースの妹ビルキスは、やはり医師として、同じ病院のER(emergency room・緊急救命室)で働いていた。彼女はメディカル・スペースシップの救命クルーとなることを志願し、救命医療の経験を積む傍ら、宇宙に上がる日に備えての訓練を行っていた。


スペースシップが完成し、打ち上げを目前にして、事件が起きた。入院中だった中東の国家ザドキアの要人を狙って、テロリストが患者を装い厳重な警備を掻いくぐって潜入、要人に自爆テロを仕掛けようとしたのだ。
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