宇宙の病院船(妄想)


□XI
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避難を呼び掛けたティエレンの兵士とミシュアルとの関わりを知って、漸く人々は顔色を取り戻した。その時15名ばかりの兵士が銃を構え、機体の間を抜けて駆け寄って来た。



一人の兵士が叫んだ。「怪我をした人、近くに怪我人がいる人は手を上げて!回りの人は道を開けて下さい!」彼らは素早く分散して重傷の者がいないか確認した。幸いみな軽傷で、移動は可能だった。兵士達は負傷者に止血帯を巻き、次々に腕に抱えた。この方が速く避難できるからだった。ルトフの妻だけは自分は走れるからと介助を断り、傍らの走るのが困難そうな老齢の男性の介添えを兵士達に頼んだ。


上空では1機になったヘリオンが、ティエレン3機の対空砲撃で目標への接近を阻まれていた。だが早く脱出しなければ換装を終えた機体が次々と出撃してくるだろう。地上では内部の離反に気付いた国軍が、MAジャーチョーを出して砲撃を加えてきた。


ティエレンの左足からパージしたシールドは、予め取り付けておいたカーボンワイヤーで機体の腕から吊り下げ、揺れ動かないよう脚部に固定し、人々の左右を守る。1機はシールドを横長に左足に固定、背後を固めた。後ろと左右のシールドの互いの端を近接させると、囲われた人々は狭く過密な空間を走らねばならず、ドミノ倒しになる危険性もあった。そのため、敢えて左右のシールドの間隔を広く取り、人々をその内側に12人1組で横に並ばせた。負傷者と高齢の者は別に兵士達が運ぶので、人々の列はシールドの壁の内で7列にまとまった。整列時に埃よけのマスクが配られた。左右のシールドのカーブした部分を後ろに向け、人々の最後列の両端をカバーした。狙われる背後の隙間を少しでも狭めるためである。それでも空く後ろのシールドとの隙間は、無人MAジャーチョー2輌が固めた。
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