勇者達の翌朝(旧書・回想)

□緑の火、オリーブの瞳
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旧書「緑の火、オリーブの瞳」1の2(守護者)

指揮官らしき人物が、
「後方と前方は速やかに交代しろ。今まで戦っていた前方は帰還、交代した後方は、事後処理を開始する…」
と指示を出していた。
盾は無くなったが、ユッシとサヤンは無傷だ。駆けつけた魔法医に、サヤンは、守っていた負傷兵を託していた。
ホプラスは、水の回復魔法で、ルーミの細かい傷を直す。
ディニィが、彼ら二人の所にやって来て、怪我の有無を尋ねた時は、ルーミは治っていた。
ディニィは、ホプラスの傷を治そうとしたが、彼はかすり傷だった。魔法剣は、対象と距離がとれるからだろう。
ホプラス達は、前方の部隊と共に、帰還した。
レアアイテムとなる牙や鱗を、魔法官達が持ち帰りたがった。特に反対する理由はなかった。
街に戻ってから、協力してくれた領主のオルタラ伯の屋敷に行く途中、一人の兵士が、宝石のように綺麗な眼を持って、ディニィの所にやってきた。
水魔法でコーティングした容器に入れていたので、安全だ。ディニィの傍らにはエスカーがいたので、宮廷魔術師の彼に、レアアイテムとしての価値を聞きたがったのだろう。
重いだろうからと、ルーミが受け取った。その時、サヤンが、魔法部隊の隊長が、ディニィに回復を頼みたいと言ってる、と呼びに来たので、ディニィとエスカーは、少し離れた。ルーミが、それにしても、重いな、と、その場に一度降ろした途端、ドラゴンの眼から、炎が暴発した。
「ルーミ!危ない!」
ホプラスが、ルーミを、激しく突き飛ばした。同時に、ホプラスの身体に、炎が移る。咄嗟に、水の盾を出して、防御していたが、炎は、それを突き抜け、ホプラスを火柱に変えようとしていた。
俺は、咄嗟に、ホプラスの中に入った。守護者の力を使えば、頭が降っとんでないかぎり、致命傷からでも助ける事ができる。
こいつには、まだ、やることがある。守りたい人達がいる。こいつの、未来は、俺が守ってやらなくては。
入った時、ああ、これなら、大丈夫だ、と思った。火のエレメント過多により、なんとかいう炎症で苦しむかもしれないが、外傷はない。火傷もない。髪の毛一本傷ついてない事が、不審だろうが、とにかく、俺は早く出て――――。
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