勇者達の翌朝(新書・回想)

□真珠取りの恋
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新書「真珠取りの恋」(ラール)1の2

ミルファは、シェードとレイーラの縁で知り合ったメドラ、タラといった、「海賊」仲間の事についても書いてあった。
タラは、コーデラにもラッシルにも、よくある名だ。だが、レイーラ、メドラときて、さっきパラパラと見た、「真珠取りと海賊」を手にした。

南方のとある島。島はヒンダ国の王族で、国王の従兄弟の息子に当たる、サフィロス提督が管理している。提督はまだ若いが立派な人で、皆に慕われていた。
彼の管理する島は、大粒で金色に輝く真珠の産地として有名で、周囲の島はサイヴァ国の支配的な植民地政策下にあるが、唯一、豊かで平和な島だった。
神殿には御神体として、特に大粒の玉だけを集めて作られた、首飾りが祀られていた。
彼は、島で一番の真珠取りレイーラ(真珠取りは女性の仕事だった。)を密かに愛していたが、彼女には、サイヴァに逆らう海賊の首領の、コリンという恋人がいた。
サフィロスの副官のカストールは、平民だが、海洋貿易を一手に担う、裕福な商家の出身で、サフィロスの親友でもある。本国から両親の薦めで、財産はあまりないが、家柄の良い伯爵令嬢シモーネと婚約した。シモーネは島にやって来て、二人は初めて顔を会わせた。だが、彼は、島の神殿の巫女であるメドラと愛し合っていた。巫女は独身が原則のため、これは許されない秘密の恋だった。
サフィロス達は、コリンを捕らえたが、海賊とは言え、実際はサイヴァ国に逆らうレジスタンスのリーダーなので、彼を生かして協力してもらいたいと思っていた。しかし、子供の頃、北の海で海賊に両親を殺されたシモーネは、法に乗っ取って死刑にしてほしい、と婚約者を通じて訴えた。
一方、サフィロスは、レイーラへの恋心と、提督としての責任との板挟みで苦しんでいた。
カストールは、サフィロスに協力するため、メドラに頼み、占いで「処刑するな」とお告げを出して貰おうとした。メドラはレイーラと親友でもあり、実際、今まで彼らを占って、幸福な未来しか出たことはないため、嘘の預言は出来ないが、公開での占いなら、と引き受けた。
しかし、サイヴァ国から賄賂を受け取っていた、首席神官のエレミナースと、カストールの秘書のクラデントルが、「死刑判決を出さないと、カストールが本国に帰ってしまう」とメドラに吹き込んだ。グラデントルは、さらに、嘘の結果を出すようにメドラに言うが、メドラがそれでも毅然と断ったので、エレミナースは、占いを発表する直前に、御神体の真珠の首飾りの紐が切れた、と、不吉感を強調して煽り、メドラが慌てたすきに、結果を記入した紙をすりかえ、預言を偽造して、公の場で死刑宣告を出させた。メドラは、養父のエレミナースの背信に抗議するが、カストールとの仲を気付かれており、逆に脅される。
サフィロスとカストールは陰謀に気づき、いったんコリンを処刑した事にして隠した。サイヴァはリーダーがいなくなったと思い、攻めてきた。
しかし、生きていたコリンと、サフィロス達の活躍により、サイヴァは撃退される。
サイヴァと通じていたグラデントルの陰謀もばれ、彼は本国に帰され、裁かれることになった。エレミナースは逃げたが、島に束の間の平和が戻った。
だが、シモーネは、援軍としてわざと遅れてのこのこやって来た、部隊長ルセントに訴えて、コリンを捕らえてしまう。彼女は、婚約者の不貞には気づいていなかったが、エレミナースの嘘により、サフィロスではなく、婚約者がレイーラを愛していると思っていた。レイーラはコリンのために自分の婚約者を騙している、と信じこんだシモーネは、何とか口実を儲けて、二人とも処刑してしまおうと考えた。
しかし、島の真珠取りの仲間だけでなく、コリンによって解放された群島の民が連合を作って反対した。また戦争になりそうな空気が広がる。
レイーラは、コリンの捕らえられた地下牢にきて、彼を助け出そうとするが、ルセントに捕まる。サフィロスは、とっさにレイーラが自分の婚約者である、と嘘をついて庇う。
王族の結婚式には恩赦がある。カストールは、レイーラに、サフィロスと結婚して、コリンを助けるように薦める。
逃亡したエレミナースが、コリンと対立する立場の海賊達を応援にして、戻ってくる。近くの島を攻撃するが、ルセントは正規軍でもない相手との戦闘を嫌い、出撃を拒否する。
サフィロスは牢からコリンを出し、仲間を率いて戦え、愛する人と共に、と、レイーラを彼の手に返した。
彼等の旅立つ姿を見送るサフィロス。一方、メドラは巫女として必死で呼び掛け、ルセントの部下達に、骨のあるものは島民と共に立ち向かえ、と説得し、成功する。
しかし、部下を取られたルセントは、メドラを殺してしまう。カストールは、メドラを選ばなかった事を後悔して嘆く。メドラは息絶える。
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