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□親バカの憂鬱。
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どおおぉおおぉおおんっ!!

「大車輪やめろ言うたやろおおおおおおぉぎゃぁああああああ!!」

球を打ち合う音が響く校庭に、白石の絶叫が響きわたった。
しまったと顔をしかめるのは白石の絶叫の原因、遠山金太郎。
あれだけ咎められていた大車輪山嵐を放ってしまったのだ。もちろん威力は絶大。
あたりに爆発音と砂が舞う。

「白石ーっ!!無事かーっ!?」

一番に我にかえったユウジが声を張り上げた。
金太郎も急いであたりを見回すが、砂嵐の中ではよくわからない。
金太郎が砂嵐の中に突っ込んでいこうとしたその時。どこからか凄いスピードの物体が飛んできた。
その物体のおかげで砂嵐が晴れる。

「俺は無事やでー…。」

「まだまだだね。」

手をふりながら姿を現した白石に厳しい一言が放たれた。
その聞き覚えのあるセリフと声に、全員が視線を向ける。
そこに立っていたのは。

「コシマエやーっ!!」

東のスーパールーキー、越前リョーマ。
思いがけぬ人物の登場に、そこにいたもの皆が目を丸くした。

「迷子になっちゃった。」

「「「東京から!?」」」

「嘘だよ。」

全員が息を揃えてツッコむのを見て、リョーマはくすりと笑う。
その顔はいつものふてぶてしい顔とは大違いで、心底楽しそうに見えた。
ツボにはまったのか、肩を微かに揺らし笑い続けるリョーマに、金太郎は目を奪われる。

「金ちゃん?どうしたん?…はっ!まさかどこか具合でも」

「いや…違うやろ。」

どこまでも空気を読まない白石を、謙也がたしなめた。
拳と共に。

「…っ!?」

鈍い音があたりに響き、白石は頭を抱えうずくまる。
相当痛かったのだろう。
ユニフォームが砂まみれになるのも構わずに、地面を転がり始めた。プライドなんてとうの昔に捨てている。
そんな二人を見ながら、財前はぽつりと呟いた。

「部長…ホンマバカっスわ。」

「コシマエ!会いたかったで!!」
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