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□序章
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『…一人で辛かったろ。もう大丈夫だぞ。』
そう言って、少年が震える少女に手をかざす。
『おにいちゃん、わたし、しんじゃうの?』
そう言う少女の目は、不安げに揺れていた。
そんな少女に、少年は一瞬眉を潜めたが、すぐに優しげな笑顔になる。
『…ああ。…しかし、恐れることはない。向こうにはお前の仲間がたくさんいるぞ。』
『…おにいちゃんもいる?』
『…ああ、そうだな。』
『…そっか。』
少女がにっこりと笑った。
消えゆく自分の体を一瞥し、少女は口を開く。
『100ねんごのあおいつきのよるに、むかえにいくからね。…なかまをつれて。』
『…は?』
訳がわからない、と?マークを浮かべる少年に、少女はすぐに分かるよと笑った。
『ちゃんとおぼえておいてね。わたしのなまえはねー…』
パッと完全に姿が消える。
少年は空を見上げながらぽつりと呟いた。
『やっぱり…慣れねぇな、コレ。』
そう言う少年の翡翠色の目は、少しばかり曇っていた。
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