NARUTO【テンカカ】

□これが、恋
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「・・・はぁ」

テンゾウは今日何度目かのため息を漏らした。
今日は任務がなく、暗部待機所で朝から一人、時間を持て余していた。
他の待機のメンバーは自宅待機と称して自由時間を満喫しているが、家に帰っても特にする事はないので、
真面目に待機室にて待機しているのだが――正直暇である。

ソファに腰掛けて愛読書を開いているものの、何度も読み返していたのでいい加減見飽きていた。
定時まではあと少しだった。

「・・・暗部の僕が時間を持て余すことは里にとっていいことなんだけど、・・・暇だ」

一人ぼやいても、誰もいないのだから勿論返ってくる返事などない。
カカシが暗部を去ってからというもの、テンゾウは時間が過ぎるのがものすごく長く感じていた。
任務以外に限ってのことだが。

火影直下の暗部に配属されて、今では部下と呼べる後輩も出来た。
暗殺任務やランクの高い任務の度、全員が無事に帰還できること以上望むことなどないのに、
充実感が得られない日々を送っていたのだった。

(・・・なんでいきなり上忍師になろうなんて考えたんですか?)

テンゾウはカカシに聞きたい問いかけを何度も心の中で繰り返していた。
カカシが暗部に配属するよう三代目に働きかけたおかげで今の自分が居て、他の先輩よりも一緒の任務が多かったせいなのか、
カカシがいない日々に未だなれないでいた。

(いや、僕にとっていきなりだったけど、カカシ先輩にとっては随分前から決めていたことかもしれない。
後輩って立場の僕に相談なんてするはずないのはなんとなく理解は出来るけど、直接カカシ先輩から話して欲しかったな・・・)

ふと気付くと、テンゾウはそんな事ばかり考えているのだった。
かれこれ10年近く同じ暗部に所属していて、ツーセルの指名はいつもテンゾウにする位、
一緒に任務をこなしていたから任務の面では信頼を置かれていたと自負していたのだ。
だから、大勢の中の暗部の仲間より近い存在だと思っていたのだ。
なのに、カカシはテンゾウに何も言わず去って行ったのだ。

(時間が過ぎれば、カカシ先輩の事をこんなに考える事はなくなるのかなぁ)

今まで任務で数ヶ月顔を合わせないことは何度もあった。だが今回は違う。
正規部隊に転属したカカシが、暗部のテンゾウと同じ任務につく可能性は低い。
ましてやただの後輩という立場でカカシと顔を合わせる可能性も同じく低い。

直接カカシの口から転属の話を聞いていたり、転属を希望した理由を聞いていれば
こんなに気になることはなかったのか、テンゾウ自信わからないでいた。

(今頃何してるんでしょうかね、カカシ先輩は)

任務中であれば集中して、カカシの事を考えることはないのだけれど、一人になるとずっとこんな調子だった。
カカシの住んでいる場所は知っている。
暗部から転属後は上忍寮に引越ししたと誰かから聞いた覚えがある。
そんなに会いたければ会いに行けばいいと思い実際に足を運んだこともある。
不在で顔を合わせることはなかったが。
ただ、会いに行った所で実際にカカシが居たとしても、会いに来た理由が説明できない。

『なんで上忍師になろうって思ったんですか? ずっと気になってカカシ先輩のことが頭から離れないんです』
なんて正直に言ったところで、引かれることは間違いないし、
『近くに寄ったので・・・』なんて理由も通じないだろう。

そもそもテンゾウ自身、何故こんなにもカカシの事を考えてしまうのかわからない以上、
今はむしろ会わない方がいいのかもしれない、とも思ったりしているのだ。

「・・・そろそろ、帰りましょうかね」

時計の針が定時を指したのを確認したテンゾウは、待機室を後にしたのだった。



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カカシ24歳、テンゾウ20歳の頃のお話です
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