NARUTO【テンカカ】

□だって、好きなんだもの
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「・・・ったく、なんでいないのよ。アイツ」

明かりの消えた部屋を見上げてオレは思わずそんな呟きを漏らした。
部屋に入らなくても、部屋の主か不在なのは気配で分かる。

本来なら明日の午前中に任務を終えて里へ戻る予定だったが、
ナルトとサクラを無理やり説得し、予定を変更して先ほど里に戻ってきたところだった。

そりゃ、『今日中は無理かも』と言ったけどさ。
出来ない約束はしない主義だから、ああ言ったけど、帰ってくる気満々だったんだよオレは。
それともはっきり言わなかったオレが悪いのか?
どうしても今日、お前に会いたくて、急いで帰ってきたのに・・・居ないんじゃ意味無いじゃない。

あと一時間もしない内に日付が変わる時間だった。
今日が『特別な日』だと思っていたのは、オレだけだった?
てっきりお前も同じ気持ちだと思ってたんだけどねぇ。
聞きたくても当の本人がいないんじゃ聞くこともできないじゃないの。

「帰ろ・・・」

ほんの数日前に明日の昼過ぎに会う約束をしたから、長い間会っていない訳じゃない。
だけど、どうしても今日、少しの時間でもいいから一緒に過ごしたかったんだよねぇ。

理由は恥ずかし過ぎるから誰かに言うつもりなんてないけど、
残り時間の少ない今日という日は、付き合って初めての誕生日だったりするわけで――。

え?だからどうしたんですか?
なんて平気な顔して言われたら、オレってば素直じゃないから、
だよねぇ、って内心では落ち込んでいるのを隠したまま笑顔で返事をするだろうねぇ。

ま、当分口を聞くのも触れるのも一切拒否するのは間違いないけどね。

実際、今まで誰かの誕生日を祝おうとか、一緒に居たいなんて気持ちを持ち合わせていなかったのは認める。
正直求められても応えることはしなかったと思うし。
勿論、以前のオレならね。

夜も遅い時間だからケーキは用意できなかったけど、この日のために取り寄せした他国の銘酒と、
ささやかなプレゼントを手にして、恋人の誕生日を祝うために、予定を変更してまで帰ってきたのに当の本人がいないなんて。

今のオレって惨め過ぎるよ。

「・・・・・・テンゾウのバカ」

待っていればテンゾウは帰ってくるけれど、今日は終わってしまう。
約束していた訳じゃないから、テンゾウのせいじゃないとわかっていても、
もやもやっとした気持ちは拭えないまま、オレは愛しのテンゾウの部屋を後にした。
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