NARUTO【テンカカ】

□これが、恋A
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「テンゾウ、お前も今日行くか?」

同じ任務だった犬面がテンゾウに声を掛ける。
暗部の中でも古参の先輩で後輩や同僚と飲みに行く事が多くその誘いだった。

「今日はちょっと・・・予定があるので、また今度誘ってください」

普段なら誘いに乗るのだが、あいにく今日は予定が入っていた。
任務報告書を書いていた手を止め、テンゾウは遠慮がちに口にする。

「そっか、デートか」

「はい」

正直に返事をしたテンゾウだったが、慌てて訂正する。

「あ! いえ、違います! 何言ってるんですかっ」

一人で焦るテンゾウに犬面はニヤリ顔を向ける。
そんなテンゾウの様子に周りに居た数名の暗部の視線が集まる。

「ま、隠すなって。お前、その手の事はわかりやすいからな」

「・・・・・・」

上手く交わせばいいのだが、デートの予定は事実で否定する事も出来ず、テンゾウは黙り込む。
犬面にからかわれるのはいつもの事だが、恋人が出来た事は秘密にしていたし、気付かれていないと思っていただけにテンゾウは内心ひやひやしていた。

「今度、気が向いたら紹介しろよー、じゃ、お疲れさん」

困り果てたテンゾウの顔を見て、犬面はこれ以上の追及はせず、テンゾウの肩を軽く叩き席を立つ。

「んじゃ行くか」

興味を示していた暗部が口を開く前に、犬面はそう言って数名の暗部を連れ待機室を出て行った。

「・・・ふぅ」

静かになった待機室でテンゾウは一息つき、書きかけの任務報告書に取り掛かった。

(僕って、そんなにわかりやすいですかねぇ。
カカシ先輩と会えるのが久しぶりで嬉しい気持ちはあるけど、普段と変わらず任務に就いていたつもりだったんだけどな)

黙々と書き進めていた手を止め、恋人の顔を思い浮かべる。
近くに人の気配があれば無表情を装うが、待機室はテンゾウ一人なので自然と顔が緩む。

テンゾウがカカシと恋人として付き合うようになったのはつい最近のことだった。
忍一筋で恋愛とは縁がなかったテンゾウは、カカシに向けている気持ちが『恋』だとは知らずにいた。
当の本人に『恋』と気付かされ、自分の気持ちを自覚したテンゾウはその場で付き合いを申し入れ、恋人としてお付き合いを始めたのだった。
急に暗部を去ったカカシと数ヶ月振りに偶然会ってなければ今も自分の気持ちが『恋』だとは気付いていなかっただろう。

テンゾウにとって初めての恋人が、忍として尊敬しているはたけカカシなのだ。
しかも付き合ってまだ一ヶ月にも満たないのだから多少浮かれ気分が抜けていないのはしょうがない事なのかもしれない。

(早く会いたいなぁ)

そんな事を考えながら時計に目をやると約束の時間が迫っていた。

「まずい・・・」

このまま考えに耽っていては、待ち合わせに遅れてしまう。
テンゾウは頭を切り替え急いで任務報告書を仕上げる。
火影へ提出した後、恋人との待ち合わせ場所へと向かった。
 

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