NARUTO【テンカカ】

□『特別』な人
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「それは、テンゾウの勝手な思い込みだよ」

確かに今のカカシを見ているとテンゾウと同じように考える人もいるだろう。
だが、物心ついた時からそうなった訳ではないのだ。

今までの人生で共に生きて行きたいと思う人や、心から愛した人もいたが、それを続けることは叶わなかった。
みんな先に逝ってしまったのだ。
カカシと想いあった人たちが、カカシを残して逝ってしまう度に、心から感情が奪われていったのだ。

カカシ自身の心を守るためにはそうせざるを得なかったのだ。

「・・・僕はあなたの『特別』になりたいんです」

過去の思いに耽っていたカカシはテンゾウの言葉で現実に呼び戻される。

「さっきから何? テンゾウの言う『特別』は、『恋人』って事なの?」
「違います」

テンゾウは続ける。

「今のカカシ先輩の・・・、あなたの一番になりたいんです」
「・・・難しいこというねぇ」
「そんなことありません。単純じゃないですか。カカシ先輩の一番になりたいって言ってるだけです」

言葉の意味を直訳するとテンゾウの言う通りだが、今それを求めていないカカシにとっては難しいことである。

「だから・・・」
「僕だって、先輩がちゃんと考えてからの返事であれば納得しますよ。今が無理なら好きになってもらえるようにもっと努力もします。だけど、先輩の今の言い方は考えることすらしてないじゃないですか」

まともに取り合わないカカシの態度に、テンゾウはだんだんと苛立ちを露にする。

「えー、ちゃんと考えて・・・」
「考えてアレなら最低ですよ」
「酷い言い様。今好きって言ったのはどの口だ?」
「先輩っ! 茶化さないでください!」

テンゾウに一蹴されカカシは言葉に詰まる。
真剣な眼差しを向けたままテンゾウは次のカカシの言葉をじっと待っている。

「そんな顔しないでよ」
「・・・え?」

テンゾウがカカシに好意を寄せていることは、ずい分前から気づいていたのだ。
向けられる視線の熱さを心地よいと感じながらも応えるつもりはなかった。
ただ、テンゾウを知れば知る程、カカシの乾いた心を潤していったのも感じていた。

普段は上手く感情のコントロールをしていたが、あの夜は任務後に高まる欲求を解消したいと相手を求めたときに、脳裏に浮かんだのがテンゾウだったのだ。
テンゾウが向ける感情を利用して関係を持ったのだ。
といっても、全てに応えてくれているわけではないが、身体の関係だけを続けているのだ。

「んーと、じゃぁ次会うときまで考えとくから」
「はっ?」
「今は気持ちよくしてよ、ね?」
「ちょ、ちょっと、先輩! わっ」

正直なところ、カカシはこれ以上話を続ける気はなかった。
失う怖さを知っているからこそ誰も心に近づけたくないという意思が揺るぐからだ。
強引に話を終わらせると、カカシはテンゾウを押し倒して有無を言わさず先ほどの続きを再開させた。
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