NARUTO【テンカカ】

□愛しのアナタ
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一人考え込んでいると、見知ったチャクラが近くまで来ている事に気付く。
玄関先に目を向けると小さなノックと共にカカシを呼び掛ける声が聞こえた。

「よ、久しぶり」

ドアを開けるとテンゾウを背負ったゲンマが居た。

「珍しい組み合わせじゃない」

「お前のことでグダグダ悩んでたから、アスマと一緒に酔い潰しといたぜ」

酒豪とまではいわないが、そこそこ飲めるはずのテンゾウが、
ピクリとも動かないところを見ると二人に相当飲まされたと想像できた。

「別に頼んでないけど?」

得意気に言うゲンマも相当酒が入っているだろう。顔が真っ赤になるほど飲むのは珍しい。

「そう言うな。可愛い恋人なんだろ?」

「・・・まぁね」

付き合っている事は話していなかったが、ゲンマとは昔からの付き合いだ。
隠す必要はないためそのまま肯定する。

「アスマの野郎、俺にコイツ押し付けてさっさと恋人の所に行きやがったんだぜ。ヒデェよな」

中へ促すと、そう言いながらゲンマはソファへテンゾウを横たわらせた。

「ふぅ」

テンゾウから開放されたゲンマは一息ついて身体を伸ばしている。
酒に酔った状態で意識のないテンゾウを背負うとなると重かったに違いない。

「ゲンマ、ありがとね」

テンゾウの家に連れ帰り叩き起こすことも出来ただろうに、わざわざカカシの家に連れてきたのは、
ゲンマが言っていた”グダグダ悩んでた”相手だったからだろう。

「お礼なら、言葉以外が欲しいねぇ。カカシが相手なら俺はいつでも歓迎だぜ?」

ゲンマはカカシの腰へ腕を回し引き寄せると、緩く抱きしめたままカカシを見つめ顔を近づけてくる。

「ダメだって」

以前のカカシなら、そのまま誘いに乗って身体を重ねることに抵抗はなかったが、今は違う。
顔を逸らしながらゲンマの口元を手で覆う。

「ダメか」

ゲンマは諦めてカカシから離れる。

「当たり前でしょーが。ってかお前も結構飲んでんだから、さっさと帰りなさいよ」

「はいはい。邪魔者は退散するとしますか」

そう言いながらゲンマは玄関へ向かう。

「なぁ、カカシ」

「なに?」

玄関のドアを開きながらゲンマは口を開いた。

「オレが言うのもなんだけどよ。・・・もうそろそろお前も幸せになってもいいんじゃねぇか? 
まぁ、懐に誰かを住まわすのは簡単な事じゃねーのはわかってるけどよ。テンゾウの奴、心底お前に惚れてんだ。
アイツの肩もつ訳じゃねぇが、少しくらい甘えるなり頼るなりちゃんとアイツの気持ちと向き合ってみろよ。
・・・失くしてからじゃ遅いってのはお前もわかってんだろ? じゃーな」

さっきまでの雰囲気とは違い真剣な眼差しを向けて、ゲンマは一方的に言うとその場から姿を消した。

「・・・わかってるよ」

ゲンマの言葉がカカシの胸に突き刺さる。
言われなくても頭では理解しているのに、思い返すと気持ちとは逆の態度や行動をテンゾウにとっていた。

小さく呟いてみても帰ってくる言葉はなく、カカシはしばらくその場に立ち尽くしたままだった。
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