NARUTO【テンカカ】
□これが、恋
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◇◇◇◇
任務外でカカシとの接点が殆ど無いに等しいテンゾウは、緊張した面持ちでカカシを待っていた。
(勢いで誘ったのはいいけど、何か変に緊張するなぁ)
“後輩が先輩を誘って食事に出かける”
他の人から見れば特に変わった事ではない。
ただ、任務を終えて向かう先がほぼ自宅と商店街という狭い範囲で行動をしているテンゾウにとっては、
それさえも特別な事に感じられるのだった。
「お待たせ」
報告を終えたカカシが、火影邸の近くで身を潜めていたテンゾウに声を掛けた。
「んじゃ、行こっか」
それほど時間は経っていないが、陽が落ちて辺りは薄暗くなっていた。
「はい」
返事をして立ち上がるテンゾウに、カカシは行き先を告げずその場から移動した。
カカシの後を追っていると、カカシが足を止めた場所は暗部御用達の居酒屋だった。
「ここ、ですか?」
てっきり料亭とか値段が張るところに連れて行かれるのではないかと少し心配していたテンゾウの予想は見事に外れた。
「だって、その格好じゃ行ける店限られてるデショ」
奢りと言われて腹を括っていただけに、理由を聞いたところ、そんな返事が返ってきた。
確かに暗部装束のままでは町を歩くのも容易ではない。
実際に今も道を歩いてこの場所に着いたわけではなく、屋根や木々を足場にして到着したのだった。
「・・・そうですね」
この店は、暗部内での会合や、複数隊での長期任務終了時の打ち上げなどで利用するため、
普段からこの店を利用する暗部が多く、暗部装束のテンゾウが居ても目立つことはない。
カカシを待っている間に私服に着替えてたり、出かける前に変化していたら、
カカシの店の選定は違っていたかもしれないが、
とにかく今月の生活費がなくならなくてよかったと、テンゾウは胸を撫で下ろしていた。
「いらっしゃいませー」
店の扉を開くと中から威勢の良い声が店内に響いていた。
カカシは店内に足を踏み入れると近くにいた店員に何か話しかけた。
ざわついた店内では何を話しているのかテンゾウには聞き取れない。
(それにしても、忍が多い店だ)
店内は週末のせいなのか、空席は少なく暗部の者や忍服姿がちらほら見えた。
カカシの姿を見つけ声を掛けてくる忍もいたが、挨拶程度の言葉を交わしながらカカシは足を止めずにスタスタと店内奥へと進んでいく。
カカシは障子で仕切られた個室に上がると向かいに座るようにテンゾウを促す。
「ここの店は何回か来たことがありますが、個室は初めてです」
「そうなの? ま、人数多いと個室は狭いからねぇ」
テンゾウは人目を気にしないですむ個室で安心してそう口にした。
なにせ忍が多い店なので個室以外だとカカシとゆっくり話すことも出来ない可能性が高い。
障子だけの仕切りではあるがあるのとないのでは随分差がある。