NARUTO【テンカカ】

□これが、恋
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「失礼します」

店員が障子越しに中にいる二人に声を掛けて、冷えたビールと数点の料理を目の前に並べていく。
テンゾウは注文した覚えがなかったが、向かいに座るカカシが頼んだであろうと想像できた。

「では、ごゆっくり」

障子が閉まるのと同時にカカシが口を開いた。

「んじゃ、乾杯しよっか」

「あ、はい」

いつの間にかカカシは口布を下げて素顔を晒していた。
テンゾウは慌てて面を外し、ジョッキを手にして軽く乾杯する。

「あー旨い!」

カカシは「奢りだから、なお更旨い」と付け加えて、料理に箸をつけ始める。
確かに任務終わりのビールは旨いと感じられるし、目の前の料理も美味しそうだ。

だが、今のテンゾウには目の前の料理より、久しぶりに見るカカシの素顔をもう少し眺めていたかった。
今までもカカシの素顔を目にした事はあったが、カカシが暗部を去ってから、
こんな明るい場所で、しかも任務外で拝めるとは思っていなかったのだ。

(いつ見てもキレイな顔だなぁ)

数ヶ月間、気付けばずっと目の前のカカシの事を考えていたテンゾウにとって、大げさに言えば夢のような時間である。
テンゾウは今のこの状況に嬉しさがこみ上げてくるのを感じていた。

「テンゾウ? どしたの?」

じっと視線を向けられたままのカカシはテンゾウに視線を向ける。

「え、はい? 何がですか?」

「何がって・・・人の顔じーっとみて黙り込んでるから気になるデショ」

そんな事を言いながらカカシは追加の料理と酒を注文した。

「すみません、つい・・・」

言葉を濁してテンゾウも料理に箸をつけ始める。

「あっそ」

カカシはそんなテンゾウの様子を気にする事なく、料理を堪能していた。

そもそも任務以外での人との接点を極力持たないようにしていたテンゾウにとって、二人きりでの食事というのはハードルが高かった。
自分から誘っていてなんだが、相手が男女ともに人気のカカシということで、収まっていた緊張感がぶり返してきそうだった。

同じ忍とはいえ、火影直轄の暗部と正規部隊では共通する話題は少なく、
会えたら聞きたいと思っていた『上忍師になろうと思った理由』なんてこの状態で聞けるはずがない。
話題に困っていたテンゾウだったが、お互いの近況の話題をカカシから振ってくれて内心ホッとしていた。
その後は暗部時代の昔話で大いに盛り上がった。
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