NARUTO【テンカカ】
□これが、恋
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「ねぇテンゾウ、今日なんか話したいことでもあった?」
運ばれてくる料理と酒に腹が満たされてきた頃、突然カカシはそんな事を口にした。
「? どうしてですか?」
酒が入ったこともあり、最初の頃より気負わず話しが出来るようになっていたテンゾウだったが、まだ酔う程には飲んでいない。
「だって、火影邸でのテンゾウの勢いすごかったじゃない。何もないのにいきなりアレはないでしょ」
カカシは少し酔いが回り始めているのか、頬に赤みが差している。
「ははは・・・。恥ずかしいですね。久しぶりに見かけた姿だったので思わず変な力が入ってしまったんです」
「何よそれ。暗部で小隊長を任されてるってのに、そんなことで力入ってどーすんのよ」
苦笑いで正直に告げたテンゾウに、カカシは軽く言い返す。
そう言われても、実際カカシの姿を見かけて、驚きを隠せずとにかく話を繋げようと必死だったのだ。その事はテンゾウも自覚している。
あの時の姿を思い返すと冷静さが欠けていたのは認めざるを得ない。
「そうですけど、誘い慣れてないんですからしょうがないじゃありませんか」
テンゾウはグラスの酒を飲み干し、新たな酒を注ぐ。
カカシが好きだといって注文した酒は、値段が少々高めの他国の銘酒だった。
後味がすっきりしていて飲みやすいこともあり、二人で飲むには無理じゃないかと思っていた一升瓶の酒は残り三分の一くらいまでに減っていた。
「そーなのねぇ、ま、テンゾウらしいっちゃらしいけど。オレってば、てっきりテンゾウから愚痴とか?相談とか?悩みとか?何か言われるのかなぁなんて思ってたりしたわけよ」
カカシは空になったグラスをテンゾウに向けて酒を注ぐように促す。
「別に無いなら無いでいいんだけど。ま、今日はテンゾウの奢りだから、何かあるなら聞いたげる」
カカシはテンゾウに任務では見せたことのない柔らかい表情を向けて、酒が注がれたグラスに口をつける。
酒が入ったせいなのか普段向けられている表情とは違っていて、テンゾウは鼓動が早くなるのを感じた。
男女問わず人気があると噂はあったものの、特に気にしたことはなかったテンゾウだったが、今になって実感したのだった。
(なんて無防備な表情をしてるんですか、カカシ先輩)
惚けそうになるのを堪え、今ならカカシに数ヶ月間聞きたかったことを聞けるチャンスかもしれないとテンゾウは思った。逆に言い換えると今を逃すと次は期待できないということだ。