鬼灯の冷徹

□恋と言うには苦しくて。
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本当の想いを言葉にしてしまったら
今の関係が崩れてしまう気がして
だから
不安も全て消えてしまえばいいのに。


報われない
そんなことは嫌なくらい分かっている。

荒い呼吸でベッドに顔を埋めているのは動けないから。
「あのさぁ、早く服着てどいてくれない?」
心底嫌そうな声で白澤が鬼灯に言い放った。
先程まで散々人の身体を好きにしたくせに、と鬼灯は思ったが口には出さない。
否、出せない。
長時間喘がされた喉は掠れた声さえ出しにくく、痛みが酷かったからだ。
「…すみま、せ」
「謝らなくてもいいからさー。早くどけって言ってるの」

不愉快。

「─────ッ」
これ以上、嫌われたくない。
鬼灯は必死に動かすことのできない足を動かそうとするが、なかなか動いてくれない。
乱された着物を身につけて無理矢理ベッドから降りると、床に落ちてしまった。
「あは、床とキスしてるの?…お似合い」
ただでさえ火照っていた頬が羞恥でより赤く染まる。
どうやって出てきたのか分からないが、気がつくと極楽満月の外、少し離れたところにある仙桃の木の下で座り込んでいた。
「はぁ、は、ぁ…っ」
腰が、立たない。


愛の無い行為。


震えが止まらない。
愛の無い行為は快感よりも空しさ、切なさ、悲しみを与える。
それなのに好いた男に抱かれて悦ぶ自分の身体が憎かった。
汚らわしい。
自分の身体をきつく抱きしめ、腕に爪を立てると血が滴り、地面に落ちる。

他の女とは違って、性欲処理として扱われる女。
それが、鬼灯。
都合の良いただの道具。
孕んだりしたら捨てられてしまう。
使い捨てなのだ。

涙を流して身体を小さく縮こませる。

いっそのこと、死んでしまいたい。

愛も得られず、ただ心が抉られるような苦しみのみを与えられて。
傷つくだけだと理解していてもなお離れられない自分など、死んでしまえばいいのだ。
激しく泣き続けて、意識を失う。
何も考えたくない。
だが、仙桃や自分の身体から発せられる匂いが嫌でも白澤を連想させてしまう。



今夜もきっと、休めない。
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