鬼灯の冷徹

□私のせいだと言って笑って
1ページ/1ページ

「殺して」
そう願う白澤の首を絞める。
どんなに苦しそうにもがいても決して指の力を緩めない。
段々と力が抜けて、弛緩する身体。
声のない『ありがとう』
白澤は愛しそうに微笑み、力尽きる。

息はない。
だが、死んではいない。
死ねない神獣。

また彼は生きてる事に絶望するのだ。


いつから、歪んでいたのか。
もうそれは誰にも分からない。

「ん、」
微かな吐息が鬼灯の耳を擽る。
「…白澤さん、起きましたか」
俯く表情は分からないが、きっと。
「また、死ねなかった……」
歪んでいた、中も、外も。

どうして?
どうして僕は死ねないの?
死なせてくれないの

「ねぇ教えてよ鬼灯。お前が死ねて、僕が死ねない理由を…っ!」
死を望む永久の神獣。
永い時間は彼を狂わせてしまった。
「ねぇ好き。鬼灯のこと好きなんだよだからお願い死なないで死ぬなら僕を殺してから、僕は死ねないからだから死なないでぇ…」
縋りつく姿は弱々しくて。

たった1人、自分を愛してしまったばかりに永久を恐れ、狂わせてしまったのだ。
自分の、せい。

「安心してください、私はきっと貴方の傍にいます。そうですね、貴方を殺してしまう方法を探しましょうよ、白澤さん」

白澤は知らない。
鬼灯が涙を流している事を。


愛しい白澤を殺している事を。
気高い神獣を汚してしまった事を。
愛した白澤を消してしまった事を。

全て、私のせいなのですよ…。

歪んだ神を生かして
愛した神を殺して

私は一体何処で裁かれるべきなのか

鬼灯は独り、泣き続けた。
白澤に気づかれないまま。

ずっと…。













ねぇ、













こんな私を馬鹿だと言って笑って。


fin.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ