小説:ランダム短編→2

□1万打記念
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※1万打記念ですが、特にフリーとかではありません。盛り上がるわけでなし、いい作品てわけでもなし※


※綱吉中2冬、舞台は並中※



ヒトという種の、果てしない欲望というものが、己のなかにも確かに存在していたのかと。
鼓動が心臓という臓器の存在を教えてくれるように波打つ、大きく強く。

「おめでとうございます」

そんな言葉で告げられた別れはいままで気にかけたことはなかったのに。
好きだった景色も風も、応接室も屋上も、空も雲もなにもかも、置き去りにして僕だけがこの世界から切り離される。
新しい場所に同じような部屋を用意させた。
だから気付かなかった。

その景色に、この子がいないこと。
僕が残す景色の中に封じられたように留まり続け、僕を君の知らない場所へと追いやるということに、気付かなかった。

胸に咲く花は君が飾ってくれた大輪の。
不器用な君が痛め付けるから、きっと今夜にでもしおれてしまうだろう、はかない大輪の花。

手折れない君、しおれない君、留まる君、ーーー連れて行けない僕。

「また、来るよ」

だってここはいつだって僕のものなのだから。
そう告げて小さく笑うと、君は同じように笑って首を振った。

「いいえ、待っていてください。俺が行きます」

差し出された手の平は、僕らの距離があまりに離れていたから触れるには遠すぎた。
なのに君は動かない、僕も動かない。

「雲雀さんは、いつでもそこに居てください。俺が、いつか雲雀さんの場所に行きますから」

いつまでも孤高のまま、周りなど関係なく強くあって欲しいだなんて、なんて傲慢な草食動物なんだろう。
鋭いキバもツメも持ちながら、それを奮う術も持ちながら、君はそれでも草食動物だというのに、僕に命令するんだ。

僕に決して食べさせない僕の獲物。

君が僕の腕の中まで昇ってくるというのなら、腹を減らして待っていよう。

「早く、来るんだよ?」
「はい」

早咲きの桜さえまだ咲かない。
梅の花の慎ましやかでありながらそこに確かにあるという香りは、君に似ていた。






「って、委員長。たかが中学校の卒業式に何やってるんですか」
「うるさいね!いいから、しっかり沢田綱吉の言ったこととかメモしとくんだよ!!」
「……では、続きの日記書きますから、おっしゃってください」
「うん」

口述日記は恥ずかしくないのか委員長…。
草壁は口にも顔にも出せなかった…。


・オワリ・

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