小説:ランダム短編→2

□0505
1ページ/1ページ


学校が休みの日も、学校に行く。風紀が乱れるのは、規律正しい学校や会社に拘束されていない休日のが多い。開放感とでもいうのだろう。愚者は、己を律することを知らなくて手がかかる。

応接室の扉をスライドさせると、執務机の手前にバカデカイ箱が置いてあった。
1メートルほどの立方体で、真っ白の本体にピンク色のリボンが上部にちょこんと貼られている。
プレゼントらしい。
だが、草壁始めとする風紀委員たちならば直接1人で目的を明確にしながら渡してくるはずだ。
心当たりは、と浮かんで来た姿に首を振って否定する。あの子供には不可能だ。このサイズの何かを買える財力もなければ、応接室に忍び込むなんて技量もない。そもそも、応接室に近付きやしない。
完全に否定して、ふぅと息を付く。完全に否定出来てしまったことが面白くない。
しかし、こんな酔狂な行動をとるのは、あの子供の関係者であることは確かだろう。だから、あの子を思い浮かべるのはあながちおかしなことではないのだ。
近付いてリボンに付けられたカードを手にとる。
やはり赤ん坊だった。
「ヒバリ、誕生日おめでとう R」
印刷された差出人の素性を消したメッセージ。それでいて、彼にしかなしえないという状況で知らしめる力量。

「さすが」

では、期待しなくてはなるまい。あの赤ん坊ならば、僕を満足させるだけの贈り物を用意してくれるに決まってるのだから。

箱のフタを開く。
中身が動いて、丸い瞳がふたつ、僕を見上げた。

「ひ…ばりさん…?」
「やぁ」

箱を跨いで出るには足の長さの足りないこの子の、腋の下に手を差し入れて持ち上げる。
「なぜ?」と問う前に「リボーンの奴が出たら殺すって脅して来て」なんて言い訳が始まり、僕は止める。

「今日は誕生日だ」
「へ、誰の、ですか?」

沈黙の答えに必死に頭を働かせたらしい子供が僕を見上げる。
そう。
青ざめてうろたえる理由が、誕生日を祝いたい君の気持ちだと伝わることが、心地良い。

「あ、あの!!お誕生日おめでとうございます!!俺、すみません、知らなくって…」
「いいよ」

僕が怒ると思い込んでいたのか、真ん丸に開かれる瞳と口。数瞬後、へにゃりと力の抜けた笑みを浮かべた。

「そうですか?すみません。でも、おめでとうだけでも言えたから、会えてよかったです」
「うん」

かわいい。
怯えて震えて涙して叫んで逃げて捕まって、反撃させるよりも。
せっかくの笑顔だから、このまま。

「今日は、赤ん坊からのプレゼントで満足してるからね。来年は君が用意するんだよ」
「はい、それはもう!!……それで、リボーンからのプレゼントって…」

まさか、と警戒する小動物っぷりも、そのくせまだ僕が君の肩を掴んだままであることを気にしないところも、かわいらしい。

「おいで、綱吉。今日は僕の言うことをよく聞くんだよ?」
「……はい」

素直な子は好きだよ。
反抗しても無駄だ、と経験からであっても学んでいる彼に満足して微笑んで、ソファに持って行って座らせる。

さて、どこから咬もうか。



=============

あー、すっげースタンダードなヒバツナになって、
【眠気トリップって偉大】
だと思い知ります。
設定3つ立ち上げて、結局全部捨てて前置きも削除して、やっと書き上げました!!
頑張ったな私!!


20090505

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ