小説:ランダム短編

□王子様のキス
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「さっき、マーモンから聞き出した話をパシリから聞いたぞ」

いきなり前置きなしにリボーンが宣言した。
いつものことだ。

「ふーん。なんて言ってたの?」

ゲームを操作しながら、聞き返す。
聞いてると示さないとリボーンの機嫌は零地点をコンマ1秒で突破する。
こういうヤツがボンゴレボスやればいいのにと、本気で思うよ。

「誕生日にキスすると解けるらしいぞ」
「何が?」

アイスが溶ける?(※漢字が違います。)
しかしアイスに誕生日はないし、製造年月日が1周したアイスは嫌だ。

「俺の魔法が、だぞ。喜べツナ。おめーに王子様役をさせてやる」


はぁ? と振り返った俺の顔0センチにリボーンの顔があり、チュっという音がした。

「まだダメか」

唇をぺろりと舐めた赤ん坊ヒットマンがやったことを理解するまでに、俺がやってたゲームの主人公たちは全滅した。


………


リボーンの誕生日は、いつも盛大に執り行われる。
ボンゴレちっくも相俟って、危険で迷惑で大人数でぐっちゃぐちゃで、
俺の誕生日なんか記憶から飛んだり、動く体力も気力もなくなってるから振替休日・休息日みたいなもんだ。
今年もそうだよな、出し物どうしよっかと、今更前日の夜になって悩んでる。

去年や一昨年みたいに、獄寺くんやヴァリアーとかの、うやむやにしてくれる救世主がタイミング良く現れるもんだと信じてるけど、なるべく痛くない出し物がいい。
過去2回の自分の誕生日に、筋肉痛の記憶しかないなんて、最悪だ。
ーーーまあ、それ以前は友達が家に来ることすらなかったんだから、前日とはいえパーティーが開かれるのは、正直に言えばうれしい。

「ツナ」
「ん?」

チュと音がした。
眉をしかめると、リボーンも眉をしかめた。

「まだダメか」
「10分おきにやってる意味が、わかんないんだけど」

さすがに慣れてしまって、面倒になってきた。
気配もなく近づいて、気付いた時には離れているから、音と感想がなければ気付かないくらいだ。

「イタリアと時差があるだろうが、ダメツナめ」
「時差によると、日本のが先に日付が変わるんだけど」
「よくわかったな」
「調べた」

10分おきがうざかった時に。
今は、明日のことで頭いっぱいだからどうでもいいけど。

「あー、もう。明日どうしよう!! ねぇリボーン、おまえは何して欲しいんだ?」

本人に聞くのは反則かな? とチラッと思ったが、普通のプレゼントなら本人に聞くのはアリなハズだ。
点数が最下位じゃなければ何点でもいいから、ヒイキとかしなくていいから、なんでもいいからヒントとか欲しかった。

じっと、実はさっきから至近距離に居続けるリボーンを見つめると、目を反らして、また戻してニヤリと笑った。
体を離す。
嫌な予感がビシバシしてきた!!
遅いよ超直感!!
いや、みんながリボーンになんで直接聞かないかって、リボーンのSっ気をみんな知ってるからじゃないか!!
墓穴掘った!!
やばい、逃げるしかない!!

「ごめんリボーン、明日の出し物今思い付いたから、せっかく考えてくれて悪いんだけど」
「遠慮するな」
「全力で遠慮させていただきます!!」
「そう言わずに、聞け」

襟足掴まれ、逃げるのを防止したあげく、床に転がされた。
ふぎゃ、と悲鳴を上げて痛みに涙目になりながらリボーンを睨もうとすると、胸の上にちょこんと乗り上げてきた。
いつもみたいな衝撃はなかったし、赤ん坊の体はやたら軽かった。
ランボで慣れてるせいか、ランボより軽くて頼りないくらいだ。
やっと3歳って言い分な赤ん坊と、8歳らしい外国人だと、体格が違うよな…。

「ツナ」

両手で半身を起こした俺の頬を挟むと、もう一度チュツと音を立ててキスしてきた。
途端に頭に血が上る。



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