小説:長編・中編

□「予定調和」1:Side家光
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私の勝手な想像で突き進むため、ぶっちぎられても構わない方だけ、どうぞ。
(情報:コミックス19巻まで)
リアルタイムなため、ネットにしますが、本当はこの手の話は、こっちに書く予定はなかったよ…。


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予定調和 :1
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【沢田綱吉の存在は、予定調和だ。】


その、悍ましくも、最も納得させられる答えは、
9代目の遺品から見つかった手紙に記されていた。

死炎印で封をされたそれを前門外顧問−−9代目の友人である父親から受け取ったのは、必然であった。
それは、炎が枯れて引退をした9代目が書いた、
綱吉へのダイイング・メッセージ。


【沢田綱吉の存在は、予定調和だ。

君の存在がこの世界に産み落とされた瞬間から、
この世界は予定された崩壊へと歩み始めた。】


9代目が座っていた執務机に座る綱吉の前に、9代目の前に同じように立っていたであろう父親。
だが、彼はすでにボンゴレのあらゆる組織から引退した身であり、
今日は9代目からの密命を発見した「たまには息子の顔を見たいと駄々をこねたダメな父親」として通されただけの存在だ。

「…なんと、書いてあるんだ?」
「……………」

固い声に、首を横に振って応える。
獄寺隼人は親子水入らずを演出するために隣の部屋に下がっている。
リボーンや他の守護者も、ドアの向こう側に寄り掛かっているかもしれないが、
父親であり前門外顧問を露ほども疑わず、ましてや本当に疑われることなどしないゆえ、ふたりきりだった。
だが、綱吉は声を発することすら躊躇した。

「…ボンゴレの今後に、関わることか」
「はい」

つまり、引退した身には知る権利はない。
静かな息子の瞳を見返して、偉大だった9代目以上に得体の知れない大きさを感じさせる息子を、
誇りに思おうと努めた。

自分の息子が、このマフィアの世界の帝王となる。

鳶が鷹を生む。
まさにそうだ。
無類なき守護者にアルコバレーノを顧問(門内)に、同盟との信頼も絆も固く、
小さな東洋人だと侮って反発していた重鎮たちをも手中に収めた
「ボンゴレ10代目」。

彼の目の前に立って、偽りを許されることはない。
どんな見栄も驕りも、その澄んだ強い眼差しの前では力を失い、すべてが暴かれる。
だから、
綱吉の前には、すべてをさらけ出し服従する者たちと、
偽りを必要としない実力者だけが並び立つ。
綱吉の微笑みひとつだけのために、命を危険に曝す盲信者。
その中に入ることを拒絶された家光には、
彼を息子と呼ぶことすら許されないように思えてならなかった。

「この手紙を、待ってました」

静かな声が、執務室の静寂を破った。
伏せられたまぶたで隠れた瞳に、ふっと緊張を解く。
手紙を出した瞬間から、この空間を支配していた威圧感から開放され、
ようやく家光は自分が緊張していたことに気付く。
成人したばからの息子に、歴戦の猛者を名乗った自分が、だ。
力の衰えからではない。
得体の知れなさ。

ボンゴレの支配者は歴代異質だという。
自分と親交の深い9代目が穏やかであったせいで忘れがちであったが、ボンゴレの血筋が強く発現する特殊能力は、
持たぬこの身には羨望と畏怖を掻き立てるものだった。
同じ血を流す自分がそうなのだから、他の者はいかばかりだろう。

ザンザスは。
−−家光は、9代目の養子に思いを馳せる。
ザンザスは、
たまたま9代目と似た能力を身に宿していた、幸運な子供だった。
あるいは、不幸な。
もし9代目が、特別に穏やかと称されるわけではない、
9代目の穏やかさが歴代と同じ能力だというレベルのマフィアであったなら。
ボンゴレでさえなかったなら。
ザンザスは血筋も関係なく、そのカリスマと実力と頭脳と特殊能力で、今、この机に座っていただろう。

だが、
ここはボンゴレだった。



→つづく
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