小説:長編・中編

□私立雲雀学園
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私立雲雀学園。

ダメツナこと、沢田綱吉が見上げた学校が、そんな名前で呼ばれていることなど彼は知らない。
真新しい制服にも疑問も持たず、期待に胸を膨らませつつ不安に視線をさ迷わせながら門の中へと一歩を踏み出した。



入学式が粛粛と行われ、春の麗らかな風に眠りを誘われ始めた時、
空気が一変する。
学ランを、というより親の世代だってあまりリアルには知らない前時代の長ランを着た厳ついリーゼント軍団が、入学式が行われている体育館を取り囲んだ。
ほとんどの生徒が、殴り込みかとかパニックを起こそうとする中、
一部の生徒たちは「やっぱり」と逆に落ち着く。
ツナもまた、「並盛という名前の学校なのに、何もないなんておかしい」と感じていたクチで、
やがて登場した風紀の腕章も艶やかな委員長の姿に微笑む。

威圧的な、だが学校生活を規律正しく送れという至極真っ当な訓示を述べた雲雀恭弥は、
注意事項を言い終えて教師たちをも威圧的に睥睨し、
ツナのほわほわした薄茶色の頭に視線を定める。

「そうそう。
制服が君には似合わないから、今年から変えたんだよ」

ぼんやりと雲雀を見ていたツナは、がっちり視線が絡まり自分に呼びかけているのだとわかりビビる。
周りがそれどころじゃないのが幸いだ。
目立つのはゴメンだからだ。

「でも、まるっきり同じじゃ詰まらないでしょ?
タイの色だけは変えてみたんだけど…。
前から思ってたけど、君はピンクが似合うね」


だ・か・ら!!
並中と同じ形と色のブレザー(素材が多少違うらしいが)に、
ネクタイだけショッキングピンクに近いような鮮やかで濃いピンク色なのか!!
いや、おかしな色じゃないし(エンジ色より鮮やかって感じ?)女子の制服に合わせたのかな、と納得してたんだけど…。

いやいやいやいや、
別にオレには関係なく雲雀さんの並盛愛かもしれないし!!
なんとか気を取り戻したツナは、雲雀の満足そうに細められた目に気付く。

「それから、校歌。
高校生にもなって歌えないなんて言わないでね」

なんだそれ。
誰か無知な勇者が呟いたが、運がいいのか聞き咎められる前に、雲雀は壇上から降り、
校歌の前奏が流れ始めた…。

「こ、これって…」

聞き覚えというよりも、馴染んできたメロディーに、
あまりにあまりな雲雀らしさに頭がクラクラする。

それは、並盛中学校校歌の、
豪華オーケストラバージョンアレンジ

並盛高等学校の校歌だった…。


風紀の目が光る中、軽やかな歌声を響かせる並中出身者たちの中に綱吉の姿を見つけ、
ひとりほくそ笑む雲雀恭弥だった…。


「入学式」20080206up
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