小説:獄寺祭

□免罪符〜indulgentia?〜
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獄寺くんがイタリアで9代目にとり立たされるって試された話みたいな、
個対個の、対等な感情の交差。

対等、が難しいから、そこは目をつぶってください。

舞台は中3春かな…。
中2春のがいいんだけど学年はあまり気にしないで〜。
獄寺/ツナで視点が変わりまくります、注意。



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免罪符
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困った、って顔は気付いていた、知っていた、見慣れていた、

いつも、

見ていた。


そんな顔をさせるために側にいるわけではない。
違う。
10代目が俺を頼るのはいい。
10代目が俺を見つめるのがいけないんだ。

俺は右腕で、
1番信用されていて頼られて側にいてあなたを見ていて、
そのために、1歩後ろに控えている、
のが、
俺が右腕としてしなければならないこと。

隣ではダメだ。

できない俺。

「隣にいて、話を聞かせて、どうしたの今日は元気ないけどだいじょうぶ?」

あなたが向き合うから。
俺を背後に置いて、
空気のように当たり前な付属品として置いて、
視線もくれず話もせず、他の誰かと向き合ってくれるのが、俺のボス。

あなたは、俺のボス。

なのに俺は、あなたの右腕になれていない。


・・・・・・・・・・


俺の親友は山本だと思う。
−−それは、綱吉には動かしがたい事実だ。
昨日見たテレビ新しいゲームや宿題や授業や先生へのくだらない話に、
他愛なく笑い合って、肩を叩いて、
一緒にいるのが楽しくて、いつも一緒にいたいけど離れていても寂しくなくて、
また朝会って「おはよう」と言ったらすぐに楽しい気分になれるような。


じゃあ、
山本よりも1日の長い時間を過ごしているこの人は、なんて呼べばいいんだろう?

獄寺くんが言うみたいに「右腕?」
でも俺はボスじゃないし、なる予定もないし、
そんなことは10日に1度は叫んでる。
聞く耳持たない獄寺くんに伝わってるか、わからないけど。
意味は伝わってないだろうけど、言葉すら耳に入ってないような気がする。

1度聞いたら覚えてしまう超優秀な頭脳で、学校のテストなんか先生の計算ミスで99点満点になってた時以外は100点しか取ったことないのに。

「10代目、行きましょうか」
「え、どこに…」
「シャマルの野郎のとこですよ」

シャマルにいろんな反発みたいなのを持っている獄寺くんだから吐き捨てるように呼んだけど、
俺が聞いていなかった担任の先生の言葉を正解に聞いていてくれた。

「そうだったね。行こうか」
「はい」

俺たちは、春の保健強化月間とかいう、どうでもよさそうな行事の実行委員という、さらにどうでもよさそうなクラス委員に、
さっきなった。

いつものように、「ダメツナがやればいいんじゃない?」な展開に、獄寺くんが噛み付いたから他の子がやるハズだった。
でも、引き受けることにした。

代わりにやることになったのが、京子ちゃんや黒川と比較的仲がいい女子二人だったからだ。

俺が気にしたきっかけは、京子ちゃんに話しかけた黒川の
「あの保健医に女子はありえなくない?」
という言葉を拾ったからだけど。
だから。
京子ちゃんのことを耳を澄ませて聞いていたせいなんだ。先生や肝心の女子たちの言葉なんか聞いていなかったんだ。

「俺がやります」
俺が手を挙げると、真っ先に賛同してくれた獄寺くんの手放しの賛辞は、
胸に痛い。

「思いやりがあってお優しい10代目」
どこの誰だよ、そんなパーフェクトな奴。
山本のことじゃないかと思うこともあるけど、
山本は獄寺くんへだけは、なぜか優しくも思いやりも感じにくい。
俺を挟んで、俺を通して会話してるから気付きにくいけど、二人に交流が、あまりない。

でも。

すぐ先に立つ獄寺くんが振り返って笑いかけるのに、うっすら笑い返す。
背後に女子の歓声。獄寺くん、笑顔を俺以外に向けないのはなんでだよ。

もっと力を抜いて、といくら言っても変わらない。
言葉が通じない。

聞いてくれない
「彼が崇め奉る10代目」=俺、
の言葉。

…だから獄寺くん。

俺は君がわからない。


→つづく→
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