小説:獄寺祭

□いつか、光さす場所へ act.2
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笹川家にはコロネロが身を寄せているため、沢田家と同様に獄寺の出番はなかったが、彼がいつまで滞在するのかは分からない。
彼が去るときには、それなりの対策を講じる必要があった。
意外だったのは、山本の父、剛だ。
山本の剣の師匠でもある彼が時雨蒼燕流継承者であり、只者ではない事は認識していたが、獄寺の想像する以上に底の知れない男だった。
深夜の張り込み中に目にすることになった、刀を振るうまでもなく他者を圧倒する剛の姿に、獄寺は戦慄した。
それは想像もつかない深い闇を、歩んできた人間の姿だった。
いつもは気のいい寿司屋の親父が、どのような人生を送ってきたのか。城を飛び出してから裏の世界で生きてきたとはいえ、たかだか14歳の獄寺に計ることはできない。
ともあれ、山本剛の活躍により、獄寺がフォローに動く時間は竹寿司の開店中に絞られた。
余裕のできた獄寺は、周囲の動向に気を配り、何かあればすぐにリボーン、コロネロと連携が取れるよう計らった。

獄寺は普段、感情のままに行動すると思われがちだが、目的のためならいくらでも辛抱強くなれた。
優秀な頭脳を、武器として最大限に活用するための、冷静な理性も持ち合わせている。
実際、自分に接触してきた分を含め10人を超える相手を、獄寺はこの数日でダイナマイトを使うことなく追い払っていた。自身には掠り傷一つ作ることなく。
主の平穏を守るために、隠密裏に、慎重に。
自分の中の矛盾にすら、その理性でもって蓋をしたままで。

しかし昨日、三浦ハルとの思わぬ遭遇により、それを自覚する事になる。
彼女と鉢合わせたのは夕方、何人目かの接触者を撃退した直後の事だった。

→7.
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