ねむい
□1. もう戻らない
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薄暗い部屋の中、目を覚ます。
カーテンから微かに漏れた日光が、脳を覚醒させた。
途端に衣服が纏わりつくような湿った不快感を感じ、顔をしかめる。
枕元の携帯に手を伸ばし、時刻を確認した。
『…………寝過ぎたか』
時刻は午前10時。
寝違えたのか首が少し痛い。
夏休みが始まったばかりという安心感もあり、なかなかベッドから降りる気にはなれない。
そのまま携帯をいじり始め、着信やラインの通知を確認した。
静寂、キーーンという小さな機械音だけが鼓膜を震わせる。
「カケルー?ちょっと買い物 行ってきてくれるー?」
突然、部屋の外から母に呼び掛けられ、心臓が跳ねた。
ベッドから身を起こし、呼び掛けに反応する。
『……はーい』
顔を洗い、歯磨きをし、着替える手間を考えれば少し面倒な気もしたが散歩がてら買い物するのも悪くないと思い、部屋のドアに手をかけた。