資料という名の書庫

□シンキド?キドシン?
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俺、木戸つぼみにはひとつ悩みがある。
それはメカクシ団の団員である如月シンタローの電話番号を知らないことだ。
本来なら団員すべての連絡網を知っておかないと団長としての連絡に支障がきたす場合がある。
他の団員の電話番号は知っているのだが、あの天使...じゃなかったシンタローに話しかけるといつも無邪気な笑顔で振り向くから話せなくなる。
...ここまで言えば分かると思うが、俺はシンタローの事が大好きだ。
他のやつには負けないくらいにな。

そして今日もアジトにシンタローは来た。
「おはよー...」
眠そうな顔でやってくる。
あぁ、今日も可愛いなぁ。あ、寝癖がついてる。
うがぁああぁ!!可愛いっ!!可愛すぎだっ!!
「ん?どうした?」
返事をしない俺に対し珍しく思ったのか聞いてくる。
「あ、あぁおはよう」
我にかえり返事をするとシンタローは笑顔でおうっって返してきた。
ここに天使降臨。
その後順々に団員が集まってきた。
「やほーシンタロー君。」
カノはシンタローに飛びかかる。
羨まし...あとでカノは腹パン決定だ。
「シンタロー君いい加減に電話番号教えてよぉ。」
なんだカノにも教えていないのか。なら俺がいっても無駄かもな。
一人で勝手にへこんでいるとシンタローがこっちに来た。
カノは拗ねて自分の部屋に帰ったみたいだ。
「お、おいキド。」
シンタローはちょっと頬を赤らめている。
ん?どうした?と聞くと、電話番号を書いた紙を見せてきた。
「え?」
人に教えるのが嫌なんじゃないのか?
分からずに居ると理由を教えてくれた。
「メカクシ団に入って最初に番号を教えたかったのがキドだから。団長だからってのもあるけど...その...」
シンタローはますます顔を赤くする。
前髪を指で弄りながら小さく好きだから、と言った。
え?今好きと言ったのか?聞き間違いか?
さすがに聞き返すわけにもいかない。もし違ったら恥ずかしいやつになってしまう。
聞こえてなかったのに気づいたシンタローは少し深呼吸して真剣な眼差しでこっちをみる。
「俺はキドが...好きだ。しっかりしてるとこや優しいとこや笑顔が可愛いとこやぶっきらぼうなとこや他にも有るけどさ。とにかくお前が好きだ。だから最初に教えるのはキドに、って決めてたんだ。」
なんだこのイケメンは。
てかさりげなく告白されたぞ。
しかもメカクシ団初交換と言うことも知った。
「...あの、その、」
俺が言葉に詰まっているとシンタローは涙目になっていた。
「あ、いや、無理に答えなくて良いんだ。悪かった。」
シンタローは紙を机においてアジトから出ていった。
「え?あ、おいっ。」
止めようにも止めれなかった。
俺の意気地無し。
アイツの事が好きなくせに肝心なときに言葉がでなかった。
ありがとうって俺も好きだって言おうとしたのに。
部屋からカノがでてきた。
「追いかけなくていいの?それともヒキニートコミュ障に興味なし?」
カノは笑いながら言う。
ムカついて頭に血が昇った。
「うるさいっ!!俺だってアイツが好きだ!!けど、俺は...俺は臆病で...あいつは勇気を振り絞っていたのに俺は振り絞れなかった...。」
涙で前が滲む。
涙が止まらない。
「何で泣くのさ?シンタローだって今辛くて泣いてるかもしれないんだよ?今キドがする事ってここで泣くこと?立ち止まってることなの?」
カノは追いかけなよ。って冷たく突き放した。
だが分かってる。アイツなりに俺らの事を応援してくれてるんだ。
俺は涙をぬぐいシンタローを追いかけた。
町中を走る。景色は変われどアイツが見つからない。
赤ジャージを探しながら走る。
携帯から声が聞こえる。
携帯をみると頬を膨らませているエネが居た。
「エネ?シンタローはどこにいるんだ?」
そう聞くとエネは睨み付けながらいった。
『ご主人なら家にいますよ。ホントならあなたをひっぱたきたかったんですがこの体ではできないので忠告しときます。次、ご主人を泣かせたらただではおかしませんよ?』
そう言ってエネは消えた。多分シンタローのところに行ったんだろう。
エネもシンタローが大好きだからな。
泣いたシンタローをみてムカついたんだろう。
俺だって怒る。だからこそちゃんと同じことをしないように二人の言葉を噛み締めながらシンタローのところへ走り出す。


「はぁ...はぁ...」
足元がふらつく。
座り込みたいがまだ解決していない事がある。
ソレを終わらせてシンタローと笑いながら座って話すんだ。
シンタローの家のインターホンを押す。
『ピンポーン』
そしてドアが開く。
出てきたのはシンタローだった。目が赤い。泣き腫らしたようなまぶた。
「...なに?」
シンタローがこっちをみる。
言うんだ。ちゃんと気持ちを。好きだって。
少し深呼吸。
そして俺もシンタローをみる。
「俺もシンタローが好きだ。大好きだ。優しくて笑顔を見るたびに励まされてお前が俺の作った料理を美味しいと言って食べてくれるところも気を配ってくれるところも。全部好きだ。」
そう言うとシンタローは泣き腫らした目から涙を流した。
「嘘つき。そんなこと思ってないくせに。」
なんで?そんなこと言って俺を苦しめないでよ!!とシンタローは叫ぶ。
「嘘じゃない。」
俺はシンタローに近づいた。
「嫌そうな顔したくせに。」
シンタローは床にへたりこむ。
「ただビックリしただけだ。」
シンタローの前に座る。
シンタローの頭を撫でる。
撫でているとシンタローは少し顔をあげる。
「今さっきの言葉...嘘じゃないって誓う?」
シンタローは不安げな顔で聞いてくる。
俺はそんなシンタローに笑顔であぁ。って答えた。
「なら信じる。その代わり浮気は許さないよ。」
シンタローはイタズラっ気のある笑みで俺の腕を掴み引っ張りハグした。
俺は顔が真っ赤になる。
仲直りができて本当によかった。
「シンタロー好きだぞ。」
俺も抱き締めた。


「お兄ちゃんたち。ここ玄関なんだけど?」
ハッとなり振り返るとモモが気まずそうに言ってきた。
「すっすまん!!」
俺は即座に立ち上がってその場からずれた。
シンタローは笑っていた。
モモはそのままなかに入っていった。
そのときにあまり玄関でイチャイチャしないでよ?お兄ちゃん。
と言っていった。
「すまなかったな。」
苦笑いしながら謝る俺。
シンタローは頭を撫でながら大丈夫だって言ってくれた。
取り敢えずその場ではそのままアジトに帰った。
そして電話番号を登録した。
なんだかシンタローの名前が入っただけでニヤニヤが止まらない。
これから電話する機会が増えそうだ。

End
終わり!

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