short book

□成り代わり
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銀魂のミツバ成り代わり、シリアス、バッドエンド











『おはようございます近藤さん』

「ごぜぇやす」

「おお!おはようミツバ殿に総悟!早速今日も修行するぞ総悟」

「はい!」





てててっと道場の奥に走っていく総悟を見ながら視界の隅に映る長髪ポニーテールの男を意識する。

ああ。やっぱりカッコイイな土方さん…

そうは思うも近寄りはしない。

だって"私"は"ミツバ"じゃないから。



ある時、目が覚めたらそこは見知らぬ天井で、襖から飛び出してきた幼い子供を見てここが前世で愛していた銀魂の世界、それも病弱のミツバに成り代わっていることに気がついた。

私はそれ程鈍感ではないのでバラすようなことはしない。

その時も、けほけほしながらおはよう総ちゃん。と笑ってやり過ごした。


それからというもの、私は原作から離れるために土方さんとは必要以上の接触は避け、健康に気をつけて食事も気をつけている。





「ミツバ殿」

『?はい、なんでしょう土方さん』

「………………いや、なんでもねぇ」





土方さんは、恐らく原作修正によりミツバに惚れたのだろう。
ちょいちょい向こうからちょっかいを出してくる。
もちろん期待させるような事はしていない。

私は原作のように死なないことと、土方さんに恋をしないと自分に誓った。









それが、武州にいた頃の私の記憶。


今現在私は玉の輿というものをゲットしていた。

お相手は政府の重役………とはいかないもののかなりのお金持ちの方を捕まえた。

もちろん原作のあの男じゃないよ?
別にあの人と婚約してもよかったんだけどそれじゃあ総ちゃんの悲しむ顔をみるだけじゃない?そんなの嫌よ。

幸せな私を見て、嬉しそうにして欲しいわ。





「ダメです」

『え』

「あんな奴、僕は義兄とは認めません」

『……どうして?』

「姉上、その男を愛してないでしょう?」

『!、そんなことないわ、私はちゃんとあの人を…』


「嘘でさァ!姉上は何時もアイツを見てた!あの目でその男を見ていない事なんてすぐにわかりやす!俺は、姉上が本気で愛してない野郎と一生を添い遂げるなんて断固反対しやす」

『…』





なんでだろう、これも原作修正なのかな…あの頃からまったく好きじゃなかった筈なのにいざ皆が上京していってしまえば案外あのちょっかいを出してくるマヨラーがいないのが寂しくて…
でもこれは"私"じゃなくてミツバの気持ち。
大事にしたいけど、恋しちゃいけないのよ、"私"は…





「………姉上が何に悩んでるのかは知りやせんが、その悩みは人を1人愛する事に関係あるんですか?」

『いいえ…でも、私は…』

「姉上」

『だって…私は……』

「姉上!」

『っ』

「悪い事は言いやせん。あの野郎にちゃんと気持ちをぶつけて、それでもなお婚約した野郎がいいなら俺はもう何も言いやせん」

『総ちゃん……』





背中を押され、でにーずから一歩出れば待っていたかのように佇む男。

煙草を口で咥え、頭を掻き毟る、その人。





「……………ミツバ、」

『……土方、さん』

「あのよ、一度でいい。一度でいいからお前の本当の気持ち、教えちゃくれねぇか…?」

『……………………………わ、"私"は、私、は、……土方さんを、お慕いしておりました。そんな私の気持ちは今ここで置いて行きます』





キキィッ!
黒塗りのべんツーが私の後ろに停まる。





「探したよミツバ」

『…京一郎さん。それでは、さよならです土方さん』

「なっ?!待てっミツバっ!」



バタン!



『構わず出して下さい』

「ミツバ!おい、待てっ!待ってくれ!!ミツバァァア!!!」


発車しても尚走って付いてきていたあの人は、私をどう思っただろうか、
呆れたのか、それとも私達が望む答えをくれようとしたのか、




それを知る権利を、"私"は持ち合わせていない







(さようなら、私達が愛した人。。。)
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