short book
□出直したい
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「…………色気のねぇ下着」
『…え、狽「っ、いやあああああ!!!なんで、やだっ!こっち見ないでえええええ!!!』
始まりは最悪だった。
それは数分前に遡る。
私はワンピースオタクのユウナ、年は……せ、成人式を三年ほど前に迎えたばかりである。
両親からはいい加減アニメから卒業しろだなんて言われてるが、無理なものは無理である。
人それぞれハマるものが違うように、ゴルフを卒業しろと言われて出来るかと聞いてもそれとこれは全く別だのなんだのはぐらかされる。
漫画を卒業させたいからと言って、むやみやたらに漫画を馬鹿にする両親には漫画だって大人だと告げるとそれは成功した賢いやつなんだと言うが、私達消費者がいなければ成り立たないことをわかっているのかどうか定かではない。
まったく、腹立たしいことである。
今日も半ニート生活の1日を終え、ベッドに入りUSJで取ってもらったベポのぬいぐるみを抱きしめていた時だ。
エアコン効き過ぎて寒いな、と布団に潜ったらその布団を引っペがされてイラッと剥いたであろう父を睨みつけた。
「………誰だお前?なぜここにいる?そのぬいぐるみは何だ?」
『………え?は?何、ローのコスプレ?それで不法侵入して来たの?』
睨みつけたのは我が父ではなく、もこもこのダルメシアン柄の帽子をかぶった隈の男でした。
「不法侵入は女、お前の方だ。"此処"は俺の部屋だ」
何を言っているんだと見渡せば、確かに先程寝ようとした自分の部屋ではない。
サイドテーブルに置かれたエターナルポースや手配書、ベリーがそれを物語っている。
再度ベッドの横に布団を掴んだままこちらを睨む男を上から下まで確認して脳内で神谷さんの声を再生させた。
『…………………………え?本物?』
「意味がわからねぇな、乗り込んでおいて俺が偽物だとでも言うのか」
『うわ、マジか…本物かよ……』
トリップしちゃったのか、それともこれはリアルな夢なのか、どっちなのだろうか。
抱きしめていたベポのぬいぐるみをぎゅううと抱きしめて不安を拭おうとするも、ローに腕を捕まれベッドから引きずり降ろされる。
そして冒頭の台詞だ。
「…………色気のねぇ下着」
はっとして私のパジャマ姿を思い出す。
『…え、狽「っ、いやあああああ!!!なんで、やだっ!こっち見ないでえええええ!!!』
シャツの裾をしたに引っ張り羞恥心と戦う。
デカイ黒シャツ1枚羽織って下は丸見えじゃないか!
しかもこんな時に限ってお洒落な下着ではなく安もんの子供用…!女子力?そんなもんより楽なんだよ、安いし。
でもマジで、ちょっとこれは頂けない、お嫁に行けないぞおい。
そんな脳内会議しているとベポをローに引き抜かれる。
『あっ!私のベポ!』
「……お前の、だ?ふざけんな、ベポはうちのクルーだ。テメェのじゃねえ」
『いや、実物は確かにローさんのだけど、そのぬいぐるみは私のベポだから!ぬいぐるみくらい、いいじゃない!』
「だめだ、これは俺が預かる」
『ああああああ私のベポおおおおおおお』
トラ男にぬいぐるみのベポを盗られた!
私のベポを片手でニヤリとしながら抱きしめてやがる!コイツ、実はぬいぐるみ欲しいのか?!
流石キャプテン、ベポへの愛は想像通り過ぎて泣きそう。
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