*ココはどこ?え?トリップ?*

□第九話目
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それからの植野は全球本気だった。
体力?そんなものは気にせずに芥川の目を覚ます、
その目的のために全力を出す。
『もう眠いなんて言わせねぇ、目ェ覚まさしてやる、
寝かせねぇ、つまらないなんて言わせねぇ。』
ぼそぼそと喋りながらラリーをする。

やっぱり前に出てくる芥川には返しにくかった。
そしてマジックボレーの攻略も出来なかった。
が、正反対の方向に読もうが、関係ない。
ギリギリまで喰らいついた。
膝を擦ろうが、疲れようが、返した。
もう誰が見てようと関係ない。
『綱渡り…。』
丸井の綱渡りをやる。
「え…!?」
芥川も吃驚していた。
けど急いで前に出てぎりぎりで返す。
が、芥川も多少後ろに居たためか、滑り込みだった。
『ざぁんねん。』
ギリギリで返ってきたチャンスボールを容赦なく全力で打ち返す。


「あ。綱渡り。ブンちゃんだ。」
岡田が言う。
使わないと思っていたので、少々驚いた。
「時間差地獄の方がかっこいいのにね?」
日野崎が訳の分らない事を言う。
名前が、という意味だろうか??
「時間差地獄って長時間浮いてなきゃちゃんとできないでしょ」
一回試したのだ。10回に1回出来るかなぁくらいだった。
時間差地獄は難しい。

「んー。友里ちゃん結構本気だね」
「そうだね。友里、すぐ頭に血ィ上るんだから。」


「今のなに!?丸井君の綱渡りみたいだったけど!!」
芥川がぴょんぴょん跳ねながら言う。
勿論丸井の綱渡りの真似だ。
芥川に言われて、なんか認められたような気がしてちょっと嬉しくなる植野。
『さぁ、なんでしょうね?』
あくまでも教えない。理由は特にないが。
『…もう眠くないんですか?』
「うん!全然!目ェ冴えた!!」
ガッツポーズをする植野。
目標達成。
後は勝つのみ。
…勝てる気しないけどね。
『それはよかったです』
さっきまで全球全力だったのだ。
疲れてもしょうがないだろう。
しかしそれを見破られないように気をつける。
もう疲れてると分ったら左右に動かされるに決まってる。
左右に大きく動くのはもう結構キツイ植野。
でも、もう汗がダラダラだからバレたかもしれない。
尋常じゃないほど溢れ出ている。
けどばれない事を願って続ける。

現在3−4。
負けていることには変わりない。
けど出来るだけやってやる。そう思う。
『負けませんから。』
「俺だってー!」
そこからは二人とも全力。
けどもう限界の植野の全力なんて底が知れてるもんで。
ボールを追うのが精一杯だったりもした。
「ねぇねぇ!もう一回あれやってよ!」
『あれ、とは、なんでしょう?』
ぜぇはぁで途切れ途切れで聞く。
「綱渡りみたいなやつ!」
さっきやった丸井の真似の事だ。
『…そのうちやります。』
打つって分ってたら返されるに決まってる。
急に盛り込まなければ意味を成さない。
何回かラリーが続く。
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