【AHP】セカキク総詰め

□菊と梅
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黒い軍服









この海の向こうの私と同じく花の名前をもつ愛おしい人は、昔は厳格で上から命令口調で私に厳しく私に様々な事を強要した。
でも、私にとって貴方は紳士で優しく輝いて見えたんだ…。

「本田さん…。」

昔の本田さんに戻ってまた私を支配して欲しい。
そう思うのはやっぱりおかしいネ…最近の私はおかしいヨ…。
隣の老師を見る…。

「何あるか?」
「……はぁ。」
「人の顔見てため息すんなある!」

本田さんはこんなだっさいヨレヨレTシャツなんて着なかったネ。
いつもきっちり黒い軍服を着こなしでいたヨ…。
黒い軍服…?

「そうネ!良い事思いついたヨ!」

私はびっくりする老師を無視して急いで本田さんところに行った。


「…おや、梅さんではないですか。お久しぶりです。さぁ、中へお入り下さい。」

昔は私には絶対に見せなかった笑顔を今は存分に見る事が出来るネ。
それは嬉しいヨ。
でも、やっぱり私はまた側にいたいネ…。

「今日は本田さんに頼みがあって来たネ。」
「はい、どうしたんですか?」
「その着物を脱いで欲しいネ。」
「え…?え!?」
「そして、これを着て欲しいネ!」

差し出したのは、昔、私が泣き付いて離れたくないと行ったら身代わりに本田さんが置いて行ってくれた黒い軍服。

「…。」
「…。」

じっと軍服を見つめる本田さん。
私を…私をどうか、あのだっさいよれよれTシャツ着てる意地の悪い老師から軍事政権に戻って私を連れ去って欲しいネ…。
私はその気持ちを込めて真剣に本田さんを見つめたヨ。
本田さんは目を細めながら、軍服に手を伸ばしたネ。

「懐かしいですねぇ。まだ、持っておられたとは…。」
「当たり前ネ!本田さんから貰ったものは全て大切にしてるヨ!」

街並みも、本田さんの優しさも全て大切にしてるんだヨ!

「嬉しいです。ですが…梅さん、私はもうこの軍服には手を通す事はしません。」
「え…。」
「私は軍事政権の頃、貴女や王耀さん、任勇洙さんには大変失礼で横暴な事をしてしまいました…。私は過去を繰り返してはならないと、その軍服を着ることを辞めたのです。」

だから、申し訳ありませんがお断り致しますと、本田さんは深々とお辞儀してまたこちらを見た…が、目を見開いた。
私がボロボロと泣いているのを見てしまったから。

「すみません、梅さん!思い出させてしまいましたか?本当に申し訳ありません…。」
「違う…違うヨ!悔しいんだヨ。本田さんはそんな事してない。街並みだって綺麗に整備してくれたのは本田さんだし、勉強させてくれたのも本田さんだったヨ!なのに、老師やキムチ野郎の馬鹿の言動に踊らされて、横暴な事をしただとか責任を感じてる本田さんが可哀想だヨ!」
「…え?」
「私は本田さんと一緒にいた時の方が幸せだったヨ?」
「…幸せ、でしたか…。そう言って頂けて私は本当に幸せです。」

本田さんがにっこりと笑うので、私も思わずにっこりなっちゃうネ!

「ですから…私をまた支配して下さい!本田さん!」
「え!?どうしてそうなるんですかー!?」

本田さん、大好きネ!
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