【AHP】セカキク総詰め

□ぬこんび
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不思議









「ん…本田…。」
「何ですか?」
「本田は…寝ないの…?」
「えぇ、猫と遊んでますから、どうぞ寝ていて下さい。」
「そう…か。」

俺、ヘラクレス・カルプシは寝っころがりながら、ぼんやりと猫と戯れる本田の姿を眺めた。
いつも無表情で何を考えているかわからない本田。
怒る事も滅多に無いし、笑うのも表面だけ…しかも薄ら笑い。
でも、動物にはこんなに優しい顔も向けるんだなって思う。

「…不思議…だ。」
「何がですか?」
「本田が。」
「…私にはカルプシさんの方が不思議で仕方ないですけどねぇ。」
「…まさか。」
「本当ですよ。」

俺の何処が不思議何だろう。
いつも昼寝して、猫に囲まれて、ごろごろしてるだけなのに。
まぁ、いつか聞いてみよう。
俺は再び本田を見た。
やっぱり、動物には心からの笑顔で接している。

「…綺麗だ。」
「何がです?」
「本田が。」
「老いぼれ爺さんにそのようなお世辞言っても良いことありませんよ…。」

下を向きながらボソボソと口を尖らせて言う本田。照れてるな。

「…可愛い。良いこと…あった。」

そう言いながら俺は後ろから本田に抱きついた。

「な、何するんですか!」
「ん…ハグ。」
「私はそういう過度なスキンシップは苦手でしてっ…て!」

俺は本田のいうとこの狸寝入りをしてみた。

「…もう、寝てしまわれたのですか…。やはり、不思議な方です。」

そう言いながら、本田は俺の手を解こうとするから俺は腕にガッチリ力を入れた。

「…起きてらっしゃいますね?」
「……なんで分かった?」
「腕に力が入ったからです。離して下さい。」
「……ん。」

名残惜しいけど俺は腕を外した。
俺はやっぱりこの人に恋心を抱いているらしい。

「俺………本田、好き。」
「えぇ、私も好きですよ。」

勘違いされてるみたいだけどまぁ、いっか。
本田は周りの人の気持ちを察せるのか察せないのかよくわからない。
驚く程察してしまう時があるかと思ったら、今みたいに全く分かってない事が多い。

「もしかして……本田、わざとなの?」
「え?どうしたのですか?」
「いや…なんでもない。」
「…カルプシさんはやっぱり不思議です。」

本田は皆に愛されていることを、まだ知りもせず己を恥じている。
でも、その恥こそが本田自身を前進させているのであると俺は思う。

「…だから、時が経っても…本田には知らないままで…いて欲しい。」
「な、何の話です!?」

もっともっと、素晴らしい人になる為に…。
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