Vita/minX

□初恋・永久恋
1ページ/5ページ




「なるほど、という事はここは・・・・」
『そう!それはさっきの応用で・・・・』


バカサイユ内に響く二人の声。今この空間には翼と 輝の二人だけ。ソファに並んで座り、 輝が数学を教えているのところだ。担任の悠里に頼まれ補修を手伝う彼女は翼の友人で、彼の母とも仲が良かった。それどころか真壁の家と古くから付き合いがあり、彼の祖父も曾祖父もずっと彼女を知っている。それほどまでに 輝は長いこと生きているのだが今は割愛させていただくとしよう。彼女が人間ではないとだけ留めて置いて欲しい


『じゃあ今までのをもとにテストしようか。悠里ちゃんからもらってきてるから』
「今の俺なら perfect間違いなしだ!!」
『制限時間は15分で問題数は8問ね。よーい、スタート』


真剣な様子で何度も書いたり消したりを繰り返す翼を集中させるため少し離れた窓際の椅子に座る 輝。軽く伸びをしパチパチと瞬きしているとスッと永田が現れた


「お疲れ様です、 輝さん。コーヒーでもいかがですか?」
『ありがと。智君のコーヒー好きよ』
「ありがとうございます。ただあの、智君はちょっと・・・・」
『何言ってんの。智君は智君でしょう?それとも智也って呼んだ方がいい?』
「その方が私としては嬉しいですね。智君は少々恥ずかしいです」
「出来たぞ 輝戻れ!」
『早いね』


声を抑えて会話する二人はまさしく大人という雰囲気で、心なしか永田の話し方も砕けているように感じる。そんな会話に割って入る翼の声。自分の隣を叩き言う彼は少し不機嫌そうで、 輝ははいはいとコーヒー片手に彼の隣に座った。赤ペンを取り出し採点をすると8問中7問正解。間違っていたのは最後の問題で、ついさっき解いたものと同じやり方の物だ


『これさっき解いたのと同じなんだけど』
「 What?間違っているのか!」
『いや、て言うか式途中で終わってるし・・・どうしたの?』
「別に何でもない!見ていろ!すぐに解いてみせる!!永田は出ていろ!今日は 輝と帰る」
「かしこまりました、翼様」


もう一度プリントを受け取り回答を始める翼。たいして待たないうちに出来た式は正しく、本番は気をつけてと注意する。永田はそんな様子を見るとくすりと笑い部屋から出て行った
心配しなくとも私は翼様から 輝さんを奪うようなまねは致しません。でも、もたもたしていてはそのうち攫われてしまいますよ
声に出してしまえば彼女に聞こえてしまうだろうと永田はそのまま仕事へと戻る。部屋には翼と 輝だけ。片づけ終わった二人はそのままバカサイユを出ると帰路に着いた。翼のマンションに居候する 輝は夕飯の献立を考えながら、その隣を歩く翼は先ほど永田と彼女の会話中に抱いた妙な気持ちを思い出しながら二人は人一人分を開けた距離を保ちスーパーへ向かう




隣同士がいちばん自然




(トマト鍋にしよう。締めはトマトチーズリゾット)(あの胸の痛みは、きっと気のせいだ)


心地よいこの距離が


お題
確かに恋だった
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ