yuka短編集
□無機質な笑顔
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「無いっ……母さんの形見が!!」
バスケの練習を投げ出して校内を探し回る。
雨が降ってきて体は泥まみれになり、モデルとは言えない見た目。
「どこなんスかっ!?」
指の先が擦りきれて血が滲む。
ザァァアの無機質に降り続ける雨と涙は分からなくなり、誰かに見られないように顔を隠す。
なんでこうなったんスか…
ピアスをはずしてしまったから?
モデルなんかやってたから?
ギリッと歯を食い縛り、木の陰を掻き分ける。
「………………風邪引くよ」
パサリと頭の上にタオルが被せられ、視界が一瞬暗くなる。
バッと顔を上げると、目の前にはバスケ部一軍のマネージャー、週刊少年ジャンプゥウウゥゥウが。
「これ。探し物でしょ?」
細い手のひらには、小さいピアスが乗っていた。
「………っ、これ!?探してくれたんスか!?」
ギュッとピアスを握りしめて訪ねると、彼女は首を横に振る。
「いや別に、落ちてたから拾っただけ」
そういってしらっとする彼女の手のひらは、俺と同じように擦りきれていた。
そして髪の毛はびしょびしょで、探してくれてたことが分かった。
「…ありがとうっス」
立ち上がって言うと、彼女が笑顔になった。
「そういう笑顔のほうが、絶対いいよ」
じゃあ帰るね!と後ろを向いて去る姿を俺はずっとみていた。
俺はジャンプゥウウゥゥウっちに惚れたんっス。