yuka短編集
□本当は好きだった。
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「死にます」
目の前にいる水色が狂気に満ちた顔で笑う。
その手にはナイフが握られていた。
「は、なにいってるの」
私はその水色が首に手を持っていくのを凝視する。
そう、彼は自殺しようとしているのだ。
バタフライナイフを首に当てる。
「なにすんの、やめてよ!!!!」
バシッと彼の腕を掴むと、心底嬉しそうに微笑む。
「僕に触ってくれましたね…」
顔を紅潮させる彼に吐き気を覚える。
「もっともっと触ってください僕のこと」
グッと手首を捕まれ、顔に手が無理矢理添えられる。
………気持ち悪い。
彼と付き合って2年。
初めはとても繊細で優しい人だったのに…
いつからだろう。
彼は私が寝ていてメールが返せなかったり、
電話に出れなかっただけでリストカットを、するようになった。
黒いリストバンドの下は赤く腫れ上がった傷でいっぱいだった。