へるぷみー
□05
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暖かい日差しが辺りを照らす。
春に咲く花が、ちらほらと見えた。
朝方は冷えていたが、昼間はなかなか暖かくなる。
ふわっと吹く風に、春の香りがする気がする。
名前は目を閉じて、もうすぐコートはいらないかな、と考えた。
コツコツ、と二人分の足音が鳴る。
二人は無言で、何故か何も話そうとしなかった。
名前に関しては気まずいという理由なのだろう。
だが、影山は何故か下を向いて何かを考え込んでいた。
いつも電車できている道を歩いて帰るなんて遠すぎるが、
この時の二人は、それが苦ではなかった。
むしろ居心地の良さを感じていた程だ。
あれから随分歩き、もう名前が家から電車に乗るホームまできてしまった。
ここからは、40分ほどで家に着く。
影山が、口を開いた。
「…何も言わずに聞け」
「は!?な、」
「いいから!」
有無を言わせない勢いで名前を遮った影山は、一息ついてまた話始めた。
「正直、驚いたんだよ…お前が痴漢にあったって聞いた時」
警察から親に、親から影山にという順番で繋がってきた。
聞いた時、部活見学が終わって家でくつろいでいたが、いてもたってもいられなくなり家を飛び出した。
「勝手に体が動いてたんだよ。だから、その…急に押しかけて悪かった。」
急にしおらしくなった影山は、名前に嫌われると思った。
「別に…迷惑じゃなかった。それに、心配してくれてありがとう」
名前は微笑むと、家の前で足を止めた。
名前が、それじゃあね、と手を振り、家に入った後も、
しばらく影山はそこを動けないでいた。