へるぷみー

□08
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「きゃぁぁあ!徹くん!!!」




声援が飛び交う中、ぼんやりと彼の試合を見ていた。
自覚してから、鳴り止まない音。

実際、一目惚れかもしれない。

彼の綺麗なトスを見ていると、さらにドクッと胸が鳴った。








「…………好き、か」


「やっと自覚したかぁ」




にょき、と隣から顔を出した恵ちゃんにビクッ!とすると、彼女はニヤニヤとしていた。




「見てればわかるって。及川さんのところ行こうとすると嬉しそうにするし!」


「えっ!嘘………。」



そんなにわかり易かったのか。

自分で呆れていると、またサーブが入ったのが見えた。

迷いのない、ある1点を狙う美しいサーブ。
狙ったところに正確に、かつ強く当てる。

その対象が人であれ、床であれ。




そしてまた女子を振り返り、笑顔で手を振る。
それに、ズキンと胸が傷んだ。





ろくに彼を見ることができず、部活は終の時間に近づいていた。





「もう終わりの時間かぁ…2時間くらい居たね」


「すごい長かった」



こんなに長くなるとは思わず、げっそりしていると恵ちゃんが笑っていた。



「まっ!!及川さん見れたし良かったってことで!」


「そうだね…ありがと!」



二人で微笑み合うのを、女子の大歓声が阻んだ。




きゃぁあ!!!及川さんこっち来て!!きゃーーー!!





ん?と前を向くと、彼がこちらへ歩いてきているのが見えた。
サービスゲームでもない、試合も終わっている。
完全に自主練だからこちらに来る意味はないと思うんだけど…
















及川は名前の目の前で、足を止めた。


それを見て、周りの女子がしん、とする。
思わず佐伯と名前もだまっていた。


驚いて目を見開く。

それはここにいるすべての女子がそうだろう。







及川はにこっと微笑むと、ボールを片手で掴んだ。




「久しぶりー。ねえ、俺の事覚えてる?」





名前は、目の前の光景に目を疑った。
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