へるぷみー

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ピピピピピピ…





「うっさい!!」


バァン!とスマホを叩けば、それは止まった。
朝のアラームだ。

時刻はいつもより早く設定してあり、電車一本分ほど違う。
くぁあ、とあくびをしながらベッドから起き上がり、とりあえず服を着る。

ここからはいつもどおりの準備をして、テレビをつける。
やはり、好きな番組はやっていなかった。



「当然だよね、早いし…」

時計を見るともうすぐで6時半になるところだ。
いつもは7時半に出ていたから、一時間ほど早い。

したくを終えると、よし。とドアを開けた。

親も起きていない時間だから、少し寂しかった。



「さっむ…」


朝の冷気にぶるっと体が震える。
周りを見ると、誰もいなかった。


ほっと息をついて歩き出す。
しんとした住宅街はなんだか居心地が良い。
この場所に、一人で歩いていると思うと、胸が高鳴った。



「本当にいい空気だな…澄んでる」


朝の排気ガスも煙もご飯の匂いもないそれは、吸って気持ちよかった。




ピルルルル…


「あ、電話」


ピッと出ると、心地よい音が耳に響いた。


『もしもし、俺だよ。わかる?名前ちゃん』


その声に顔が綻ぶのを感じた。
胸がドキドキする。


「おはようございます、及川さん!」


『今、一人?』


その言葉にひやっとした。
だけど本当に一人だったから、返事をする。


「はい、一人ですけど…」


『そっか、ならよかった。今日は早いんだね。』


「飛雄と一緒にならないため、ですね…ふぁあ、眠たい」


『そうだよね!ありがとう!』



毎朝電話していいかな?という及川さんに、はい!と答えると、会話が終わった。

スマホにヘッドフォンをさして、耳に装着する。




…及川さんは私が一人なのを確認するために、わざわざかけてきたのだろうか。

もしかして、電話してきた時間に私を起こそうとしてかけてきたのか。

だから、『今日は早いんだね』なのか………




少しもやっとしたところはあるが、まだドキドキした胸を押さえつけると、駅まで歩き出した。
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