へるぷみー
□14
1ページ/2ページ
「お、及川さん、?」
振り返とそこには、腕を組みながら微笑んでいる彼がいた。
ひやっと、背中に汗が伝った。
きっといまの私は顔面蒼白で、顔はひきつっているだろう。
飛雄を見ると、彼は鋭い眼光で及川さんを睨んでいた。
「……なんすか」
「名前ちゃんの姿が見えたから来たんだよね」
微笑みを崩さないままこちらへ歩み寄ってくる。
カラスの声がやけにうるさくきこえた。
耳鳴りがする。
及川さんは私の目の前で止まり、顔をずいっと近づけてきた。
鼻と鼻が触れ合う。
合った目は笑っていたけど、瞳の奥は笑ってなかった。
その証拠に、及川さんから紡がれる言葉は冷えていた。
「で、なんのお話かな?」
及川さんの息がかかる。
飛雄に助けを求めたいが、及川さんが私の視界いっぱいにあるために見れない。
いや、目を逸らせない。
あたりはもう暗くなっているだろう。
カラスの声はもう聞こえておらず、代わりにキリギリスの声が聞こえている。
それに、肌に触れる空気も冷たい。
「及川さん。今名前と話してるんですけど」
入り込んできた影山はさっさと名前を離せ、と言わんばかりに冷たく睨む。
ふっと微笑んだ及川は、名前の肩をグッと引き寄せて歩き出した。
「っ!?」
「じゃあね飛雄ちゃん、またいつか〜」
何か言おうとしている名前を視線で圧し、空いている片方の手で影山に手を振った。