東京花魁物語2

□参
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「あんた、が…ころ、した」




見上げると、氷室さんが立っていた。
彼の顔は悠然としていて、それでいて美しい。

まるで征十郎が死んだ事なんか知らぬふりで、銃を下ろした。

その姿が憎くて、憎くて憎くて。





殺したい





そう思った。




「し、ね」


「気が変わったよ。ーー皆」



氷室さんは使用人を呼んで、冷たい瞳であたしと征十郎を見下ろした。



「その死体を、運んで」




その言葉に、ビクッと体が震えた。
ー死体を、運ぶ?

消すというのか。氷室さんは。


そして征十郎の死体に集まった使用人は、あたしを退かそうと手を述べる。



「征十郎、に……触んじゃねえよ!!」



あたしはいつもなら絶対に出さないような声と言葉を大声で使用人に叫んだ。


ならば、いっそのこと死にたい。
ここで、征十郎と死にたい。

あなたのところへ、行きたい。




「あたし、を殺して、え!!」


そう氷室さんに叫べば、彼は微笑んだ。
そして銃を投げてよこした。



「っ!!!」



リボルバーを引いてこめかみに当てて、征十郎を見る。


ーーあなたの所へ、いける。


愛してる。ずっと愛してるから。



氷室さんをもう一度見ると、意味のある笑いをしていた。
暗い中妖艶に微笑む彼は色気を醸し出していて、体が震えた。
憎くてたまらない。



ぐっ、と手を握ると、銃を引いた。












ーーカチッ










それは、銃弾の空を教える音だった。
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